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3.馬鹿な親友3
───なんてまさか口に出して言えるわけもなく、俺の心と体はしばしの間フリーズを起こす。
「んじゃ、手始めにチューから」
ハッと意識を取り戻して、近づいてきた相馬の顔を叩き落とした。
「いってぇ……」
しゃがみ込んだ相馬は、掌の跡に赤くなった顔に涙を滲ませ、驚いたように見上げてくる。
……俺には、その表情が驚きだよ、相馬。
「なんで?角谷ぁ…」
「なんで、とか……良く言えたな、お前……」
こっちは怒りで腸 が煮えくり返りそうだよ、親友……。
「俺相手じゃ嫌なのか?」
「っ……!」
…なんつー、卑怯な誘導だ……。
悲しそうに見るんじゃない!
「……お前、下半身ゆるゆるだけど、今までは、ちゃんと付き合った彼女としかヤんなかったじゃん。
俺、お前と付き合ってないのに……幻滅させんなよ…」
「そんなっ、俺、角谷に幻滅されんの嫌だよ!」
「なら、今後一切、軽い気持ちでヤラせろとか……」
「あっ!じゃあ付き合えばいいんだ」
「───っ!?」
俺は……間違えたことを言ったのだろうか………?
「角谷、俺たち付き合おう。…あ、付き合ってんなら角谷って呼ぶのも他人行儀だよな。これからは俺のこと、一翔 って呼べよな。……睦月 」
なにを…照れてやがる。名前呼んだぐらいで。
つーか、照れ顔が可愛い…とか………
───って、ちがーうっ!!
「馬鹿かっ、お前!なんでそんな理由で付き合わなきゃなんねんだよ!!」
「えっ?やだ?」
「嫌に決まってんだろ!尻孔差し出すために付き合えとか、お前馬鹿だろ!! これ以上馬鹿なこと言ったら絶交だからな!」
「えっ、絶交……?」
「当たり前だろ!絶交…だ、よ……」
我に返って、カァ───っと顔が熱くなった。
絶交とかって、いまどき小学生でも言わないようなこと………。
引かれた、相馬に。……馬鹿に引かれた……。
「あの……絶交じゃなくて、絶縁…」
「っ───いやだ!絶交とか絶縁とか!」
「ばかっ、恥ずかしいから大声で言うな!」
「俺、角谷のこと好きだもん!ずっと一緒にいてーもん!」
引かれてはいなかったみたいだ。
それどころか、なんて効果的な……。
「だからって、付き合えるってことにはなんないだろ!お前の好きは、そう言うのじゃないんだから!」
「なんだよっ!角谷は俺じゃ不満なのか!?俺のこと好きじゃないのか!?」
「好きじゃないっ!……わけないだろ………」
泣きそうだった相馬の顔が、パァッと明るく輝いた。
……だから、その顔も好きだし、そういう風に馬鹿なとこは嫌いじゃないんだよ、俺は……。
「角谷ぁ」
「懐くなっ!」
ペシンと頭を叩き落とす。
これ以上近寄られて、喜びのあまり抱きしめられようものなら、俺はオチる。即行オチる。
全然わかってない相馬に、ズルズル引っ張られて訳わかんないままヤラれる。
それで相馬は、良かったとか、そうでもなかったとか、そんな感想1つで終わらせて、俺だけ……俺だけがずっと引きずって、ずっと辛いまま………
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