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6.相馬がモテる理由2

なんで俺、こんな男好きなんだろうな……。 無意識にため息が漏れる。 パン、いつもは3個食べるけど、……なんか胸焼けしてる。1個でいいや。 「相馬、パンやる」 「えっ、いいの!?」 お前、学食行ってきたんだよな…? まだ食えんの?スゲー食欲。 「だからパン持って、あっち行って」 「………やだ。パンいらない」 駄々を捏ねるなよ。 相馬の顔は、決して見ない。 見たら、ほだされるから。 「角谷ぁ…」 「…………勝手にしろ」 「うん!勝手にする~」 顔なんか、見なくても同じだ。 この声で甘えられると、俺はどうしたって…… 好きな男に抱かせろって言われるのが、こんなにキツイと思わなかった。 そもそも俺は、抱きたいとか、抱かれたいとか、相馬に対して思ったことなんか無いんだ。 大体こいつ、デカいもん。180近いじゃん。 対して俺は170cm。10cmも高いなんて、押し倒すにも限度が……いや、でも女の方が大きいカップルもいるよな。 って、あれ相手女じゃん!10cmぐらい低かろうが、そりゃ普通の女なら男の方が腕力も体力もあるよ! それにこいつテニス部じゃん。バドミントン部の俺より重いラケット振り回して、シャトルコックより重い球打ってんだぞ。力で敵うかっつーの。 押し倒されるにしたって、俺は男で、基本押し倒す専門で……。 …ん~~………まぁ、キスぐらいなら、こいつとなら、できるかな…。 女じゃないから良く分かんないけど、首とか、耳とか?舐められるくらい、なら…? 相馬だったらその延長で……、胸ぐらい舐めさせてやっても、平気かな…。 まあ、あと……どうしてもアレ咥えたいとか咥えてとか言うなら、考慮ぐらいはしてやってもいいけど…? そのぐらいなら、女相手でもあることだもんな。うん。 それで、問題はこの後か。その流れで、もし挿れたいって言われて弄られたら……… ───っ!? ヤバい俺っ、相馬なら受け入れられる! いや!有り得ん!!受け入れちゃだめだろう!! 何を男捨てようとしてるんだ、俺は!! 思いとどまれ、角谷睦月─────!! 「角谷、どうした?赤くなったり青くなったり」 「っ……赤くなってない!」 「あっ!もしかして熱ある!?一緒に保健室行ってベッドであっためて…」 「ねーよ!熱も、あっためて、もねーから!」 「えー?でも熱…」 顔が近づいて思わずぎゅっと目を瞑ると、こつんと額がぶつかってくる。 「……あ、やっぱり顔赤い」 好きな男の額こつんは、想像以上に兇悪だ…! 「平気だっつってんだろ、この馬鹿っ」 「ほんと?体キツかったらちゃんと言えよ」 こういう男なんだ、こいつは。 頭ぽんぽんって、こういうことをナチュラルにやれる男だから、更に女の人気も上がるんだろう。 「でも、角谷の赤くなった顔って、ちょっとソソるね」 悪戯っぽく内緒話のように、耳元で囁きかけてくる。 ───フザけたことを……っ! 殴ってやろうと振り下ろした手は、いとも簡単に押さえられてしまう。 「だめだめ、人目のあるとこじゃ。後で女の子たちに悪く言われちゃうから」 ……ほぉ。自分の立ち位置をよくお分かりのようで。 つーか、こんだけ簡単に押さえられるってことは、2人ん時ボコボコ殴られてたの、あれってワザとやられてやってたってことかよ。 確かに俺はバド部の応援要員で、お前はテニス部のエース様かもしんないけどさぁ…。俺にも男のプライドってもんが…… 「相馬ーっ」 名前を呼ばれた相馬が、俺の手を静かに放した。

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