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8.コイビトなんだから1

今日は俺の所属するバドミントン部も、相馬の所属するテニス部も活動のない曜日だ。 だけど、まあいつものこと。帰りは彼女と一緒なんだろう。 教室内を見渡す。 俺もいつも通り、暇そうなヤツと駅まで一緒に帰ろう。 「角谷ーっ」 帰り支度をしていると、相馬が鞄を持って走り寄ってきた。 「はいはい、また明日」 おざなりに手を振ると、 「あれ?今日部活だったっけ?」 首を捻る。 「いや、今日は無いけど。相馬は彼女と帰んだろ」 「うん」 「だったら、早く迎え行かねーと」 巨乳ってのは大概プライド高いから、待たせたりしたら気分害しそうだし。 つか、自分から告って付き合って貰って、思い通りにならないからって腹立てるとか……良いご身分だよな。 「じゃあな、また明日」 このままではつい相馬に八つ当たりしてしまいそうで、返事も聞かずに廊下へ出た。 なんだよ、途中で誰にも会わなかったら、相馬の所為で駅まで御一人様コースじゃん。 「待って待って!」 追いかけてくる声がするから、止まらずに振り返る。 「なんで先行っちゃうの」 なんでって…… 「C組あっち」 進行方向と逆側を指さす。 「なんでC組?」 「なんでじゃねーよ。彼女と帰るんだろ?さっさと迎えいってやれよ」 「えーと…、カノジョって言うか、コイビト?」 照れんな、ばか。その可愛い顔も、他のヤツがさせてるって思うとなんか腹立つ。 「じゃーな」 顔を元に戻して、階段を駆け下りる。───と、 「あっ、待ってってば、睦月!」 速度を上げて追い越して、目の前を塞がれた。 「───ばっ…あぶない!」 「へーいきっ」 止まりきれずにバランスを崩してぶつかった俺を、相馬は左手で手すりに掴まっただけで簡単に受け止める。 「ほら、平気だったろ?」

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