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9.コイビトなんだから2

平気、じゃない……! こういうの、絶対に避けてきたのに…。 要らないスキンシップとか、ボディタッチも、好きだって気づいてから、ずっと避けてきたのに……! ……ヤバい。顔が熱い。身体も熱い。早く離れなきゃ…。 でも今顔見られたら、絶対変に思われる……!! 「ごめん、角谷!もしかして怖かった!?」 「ばっ…フザけ…なよ、…っくねーよ」 「えっ?ごめん、なに?」 「…るせー」 ヤバい。心臓が、ドクドク言い過ぎて…… 「痛ぇ……」 「もしかして脚捻った!?ごめん!」 「え?脚…?」 ちゃんと口に出せてないんだ。通じないのはしょうがない。 俺は、相馬が馬鹿なことを重々承知のつもりでいて、動揺にかまけて失念していた。 ───身体がふわりと宙に浮いた。 えっ?と思う間もなく、仰向けに浮いたまま、階段を下っていた。 「大丈夫?保健室に行こ」 大丈夫?…ってのは、捻ったと思われている脚が痛くないか?ってことで、この状態は……… 「あれっ、相馬と…角谷?えっ!?」 「あ、川崎これから部活~?」 「いやっ、俺は部活だけども、…お前らはなんでお姫様抱っこ!? 」 お姫様抱っこ……だと───!? 「ばかっ!相馬!下ろせ!!」 「ああっ、ダメだよ、角谷、脚捻ってんだから」 「平気だから!下ろせ!」 「暴れたら落ちちゃうから。ほら、おとなしくしてなさい」 「角谷、脚捻ったんならおとなしく運んでもらえば?」 とか言いつつお前、半笑いじゃねーか川崎!! 「恥ずかしかったら首に掴まって、顔隠してればいいよ」 川崎が去ってから、相馬が提案する。 首に掴まって、顔を肩口に当てて、って……… 「ほら」 相馬は掴まりやすいように、軽く抱き直してくれる。 って、これ……俺から抱きつくとか……… 左手を持ち上げて、首に腕を……うぅ、恥ずかしい…っ。 一気に回せなくて、指先でツツ──と首を辿る。 相馬の身体が、ビクンと震えた。 「…角谷…、くすぐったい…」 「…ぁっ……ごめん…」 右手で腕に掴まって、肩に顔を埋める。 「…これで顔、見えない?」 「…あ、うん、見えないと思う…」 相馬の心音が響いてくる。 鼓動が早い。 …なんでお前まで緊張してるんだよ、ばか。 脚なんか、捻ってないのに…。なんだかこのまま平気だからって下りてしまうのは、とても惜しい気がする。 「相馬…」 シャツに息が吸い込まれて、声がくぐもって聞こえる。 「なに…?」 ……好きって言いたいなぁ…。 好きって気持ちが溢れて、おかしくなりそうだ……。 ───でも、一緒にいられるこの関係を、崩したくもないんだ。 弱虫だな、俺………。 「いや……、ありがとう」 「……いや、なんのなんの!」 少し空元気に聞こえる声で、相馬は答える。 俺がいつもと違うから、戸惑ってんのかな? ……だって、好きな相手にお姫様抱っこされて、抱きついてんだぞ。 こんなの……女だったら、嬉しいけど緊張してドキドキで壊れそうって思ってても、おかしいって思われないのかな。 保健室になんて、ずっと辿り着かなければいい…… なんて、男が思ってたら、気持ち悪いか。 そういう好きじゃ、ないんだもんな……。相馬からの好きは。 なのに俺を抱きたいとか、ホント…笑わせる。 一瞬息を止めて、乱れそうになった呼吸を整える。 ほんと、フザけんなよ、お前は。……っとに、馬鹿なんだから。

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