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10.コイビトなんだから3
ガラガラと音を立てて、保健室のドアが開いた。
もう、着いちゃったのか…。
相馬が椅子に下ろしてくれる。
「今先生留守だって札下がってた」
「いいよ、普通に帰れるから」
「いや、俺がテーピングやるよ。あんまヒドくなかったら湿布だけでも良いし」
あんまり、どころか、捻ってもいないんだけどな。
「足、触るよ」
「あ…っ」
上履きと靴下を脱がされて、ズボンの裾を捲られる。
「どこ痛い?」
なんだよ、これ…恥ずかしい……。
「角谷?」
「……俺、脚痛いとか言ってないけど」
「えっ……」
「痛かったのは他のとこで、だから、自分で歩けたって言うか…」
見上げてくる視線に耐えられずに、そっと顔を背ける。
「恥ずかしかったんだからな。……ばか」
顔、熱いし。
こんな顔、相馬に見せられないだろ。
なんで赤くなってんの、とか訊かれたら、答えようもない。
「だから、平気だから、帰る」
立ち上がって、一応足首を回してみる。やっぱり、ちっとも痛くない。
「相馬、心配してくれてありがとな」
靴下と上履きを履いて、捲られたズボンも直す。
鞄を引っ付かんで相馬に背を向けると、
「だから、なんで1人で行っちゃおうとすんの!」
後ろから腕を掴んで止められた。
「なんでって、俺もう帰るんだけど」
「だから、一緒に帰ろうって」
「一緒にって……、高校入ってからお前と2人で帰ったことなんてあったっけ?」
いつだってお前は、帰りはカノジョと一緒だったじゃないか。
そうじゃなくても、女子に囲まれてるか、部活帰りのテニス部員と一緒か。
俺となんか、男友達皆で遊ぶときぐらいしか、一緒に帰ったことないだろうが。
「無いけど、今は状況が違うだろ」
状況……?
首を捻っていると、頭にポンと優しく掌が乗せられる。
そして輝くような笑顔を乗せて───
「今は睦月が俺のコイビトなんだから」
───少し照れたように赤く染まった顔を傾け、
相馬は俺に、キスをした。
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