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17.約束して2
「じゃあ、借りて帰るか」
「待って」
受付へ向かおうと足を向けると、突然手を掴んで強く引かれた。
「おわ…っ」
勢いのまま、相馬の胸にすっぽり収められてしまう。
「ばか…、なに…してんだよ…」
うぅ…、お前は平気かもしんないけどなぁ、…俺はこんなことされたら、心臓が痛い……。
ヤバい…、飛び出しちゃいそう。
破裂しそう……っ。
「角谷、約束して」
俺を抱きしめたまま、耳元で囁く。
図書室だから静かに話さなくちゃいけない。だからって、分かるけど…。
「できる限り、俺から離れないで欲しいんだ」
相馬が話す度に、耳に息がかかる。
唇の動きが、空気の震動で伝わってきて……
「お前を守るのは、俺じゃなくちゃイヤだから。ね、睦月」
「……っ───」
こんな時に、名前で呼ぶなんて、ヒドい…。
変な快感に身体が震えて、相馬の胸にきゅっとしがみつく。
「やっぱ可愛いなぁ…、睦月」
耳朶に唇が触れて、ちゅっと音がした。
「ん…っ」
耳の上側を甘噛みされて、口に含まれた部分が舌で弄ばれる。
今度はちゅくっと水音が聞こえた。
「…ゃ……っ、そ…ま…っ」
「…声出したら、気付かれちゃうよ」
舌が、耳の穴まで侵入してくる。
唇がやんわりと触れて、硬い歯が甘い痛みを与える。
耳の中に、…頭の中に、相馬の舌の音が響いて……
お腹の下の方がじわりと熱くなる。
耐えられなくて目を瞑ると、暗闇に益々音だけが響いて、堪えた吐息と混じり合って、まるで2人っきりの世界に居るみたいで……。
「耳、感じちゃう…?」
脚に力が入らない…。
「っ……ん~んっ…」
唇を離してのぞき込んでくる相馬と視線を合わせて首を振る。
「そんな顔で否定されても」
相馬は見たこともない妖しい笑みを浮かべて、顔を寄せてくる。
「説得力ないよ、睦月」
キスされちゃうって分かったのに、俺は逃げも怒りもせずに瞼を下ろして、
「睦月、すき…」
相馬の唇を受け止めていた。
その声は言葉じゃなく心地良い音として芯に響いて、まるで媚薬のように、身体を、頭を、甘く痺れさせた。
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