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20.相馬の風邪3
「鍵、借りていい?郵便受けから入れとくから」
涙を堪えて、笑ってみせる。
「いいよ、玄関まで送るから」
「無理、しなくていいから。明日も部活、出たいんだろ」
「無理してんの、俺?」
相馬の熱い掌に、両頬を包まれた。
言われたことが分からなくて、その瞳を見つめ返す。
「お前の方が無理してるように見えるよ、角谷」
「………っ」
額に触れた手が前髪をかき分け、熱を持った唇が押し当てられた。
「うつるといけないから、デコちゅーで我慢」
へらっとした顔で笑う。
「~~~っ!!」
キスされた場所を慌てて隠した。
我慢って…、我慢って、どういう……っ!?
俺に、デコで我慢しとけってことか!?
俺が相馬のこと好きってバレた!?
もしかして、からかわれてる!?
なんで笑われてるんだ!?
「角谷、顔赤いぞ」
真っ赤っかー、と相馬はからかうように節を付けて言う。
意図が分からない。
なんで、こんなことしてくるんだよ…!?
「我慢、とか…意味分かんねーし…」
「うん」
うん、ってなんだよ…?
やっぱりからかわれてる?
「だから、なんで泣きそうなの」
「……別に、泣かねーよ。それに、お前の風邪だったら、別にうつっても…」
語尾が小さくなったのは意図的じゃなかったけど……
「ん?」
聞こえなかったならその方がいい。
相馬は少し目を細めて、首を傾げる。
柔らかい笑顔。
……やっぱり、好きだ───
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