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23.ブラコンのお兄ちゃん1
浅い眠りに落ちては目覚め、思い出しては泣いて、また浅い眠りに落ちて……
そんなことを幾度も繰り返して、ようやく朝が来た。
目覚ましが鳴るのを待って、ベッドから起きあがった。
「…うっ……」
……頭が重い。
瞼も重い。
「睦月 …?」
二段ベッドの下から、颯斗 兄 の声がした。
颯斗兄は俺より3歳年上で、相馬のとこの壱哉 さんと同じ大学に通っている。
2人は俺たちと同じ、中学生の頃からの付き合いで、俺たちよりも3年付き合いが長い。
颯斗兄は俺とは違って、壱哉さんより立場が強い。
壱哉さんは颯斗兄の言いなりって感じで、ちょっと羨ましい……。
「うわっ、どうした、睦月!?」
ベッドから下りた颯斗兄が、俺の顔を見上げて目を丸くした。
「なにが?」
「なにがじゃなくて!目、すごい腫れてるぞ。そんなにして、痛くないのか!?」
腫れてるのか…。どうりで重いはずだ。
「どうした?なんか有ったのか?」
「うん…ちょっと……」
「昨夜、なんか変だったよな…。……睦月、お前、泣いてた?」
「…ちょっと……」
颯斗兄は、何故だか俺の嘘をすべて見破る能力を持つ。
だから、泣いてないなんて言ってもすぐに嘘だとバレてしまう。
少しだけ、と誤魔化して置いた方が……
「ちょっとでそんなに腫れるか!」
誤魔化しも効かないみたいだ。
「具合も悪いか?熱は…無いみたいだな」
ひんやりとした掌が気持ちいい。
「頭も…ちょっと痛い」
「睦月、お前今日は学校休め。そんな顔して外出れねーし」
そんなにヒドい顔してるのかな…?
颯斗兄のことだから、過剰に心配してるのかもしれない。
けど、今日一日相馬と会わないで済むのは、正直助かる。
「俺が看病してやるから、ちゃんとゆっくり休むんだぞ」
颯斗兄に肩をポンと押されてベッドに寝かされた。
「颯斗兄、大学は?」
訊ねると、少し考えて、
「あー…、壱哉に代返頼んどくから、平気」
何でもないことのようにそう言うと、安心させるように微笑む。
「っ───壱哉さんには言わないで!」
思わず起き上がって、スマホを取ろうとした颯斗兄に手を伸ばしてた。
あっ、と気づいたときにはもう遅い。
颯斗兄の目が、……据わってる…。
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