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26.颯斗兄と壱哉さん2
「む…つき……?」
「あ…、おはようございます……」
なんて言ったらいいのか、とりあえず挨拶してみた。
颯斗兄の手が、ゆっくりと自らの口元に上がっていって、逆にその顔から血の気がサァーッと引いていく。
「あ、れれ…?……睦月君、起きて…ました…?」
壱哉さんも震える声で、こちらの様子を窺ってくる。
だけど多分、壱哉さんを怯えさせてる相手は、俺じゃなくて………
「───壱哉っ、テメェ切り捨ててくれるッ!!」
「まっ、待って!侍ですか貴方はっ!?」
「今日という今日は…っ!」
「待って!待って!!話せば分かるーっ!!」
「角谷ぁ、玄関鍵あきっぱ…あれ、兄ちゃん?えっ……颯斗さんっ、なにやって……!?」
最悪のタイミングで、何故か相馬が現れる。
「一翔ォッ!テメェもそこに直れ!!」
「っ…はいぃっ!!」
颯斗兄の迫力に、相馬はその場に正座する。
「だめっ、相馬!ばかっ、逃げろ!」
「逃げっ!?えっ!?」
「お前ら兄弟、まとめて成敗してくれるッ!!」
「颯斗兄っ!待ってーっ!!」
叫んで止めようとした瞬間、ベッドから転がり落ちた。
壱哉さんを下敷きにしてしまったことで、颯斗兄の狂暴化を一時鎮静させることができた。
颯斗兄は俺を心配して、しばらく部屋とキッチンとをうろうろ行ったり来たりしてた。
壱哉さんは、痛む身体を我慢して、颯斗兄について回ってた。
相馬はまだ状況に付いてこられないみたいでオタオタしていたけれど、落ちた俺を心配して、「痛いの痛いの飛んでけ~」と体を撫で回してくれた。
俺は、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分の中、ガキじゃねーんだからやめろ、と相馬の頭をひっぱたいた。
なんて…駄目な奴なんだろう……。
我ながら、そのへっぽこ加減に落ち込む。
そして相馬兄弟は現在、颯斗兄の前に正座をさせられている。
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