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27.角谷兄弟と相馬兄弟の関係1

「背筋を伸ばせ!なんだその気まずそうな顔は!」 まるで、鬼軍曹みたいだと他人事に思う。 「お前ら兄弟は、角谷家に恨みでもあんのか!」 「ありません!」 相馬が大きく答える。 壱哉さんは困惑の表情を隠そうともせずに、また颯斗兄に叱咤される。 「そもそもテメェが一翔に妙なこと吹き込みやがったんだろーが!」 「えっ?妙な事って…??」 壱哉さんは颯斗兄と同じ大学だから、勉強は得意なんだろうけど…、弟と同じく理解力は皆無らしい。 そんな壱哉さんに事の流れを理解させることは早々に諦めたらしく、颯斗兄は改めて弟の相馬の方に向き直った。 なんだか普段の自分を見ているようで、颯斗兄に同情する。 「一翔、うちの可愛い睦月の尻穴に、テメェの汚ぇ肉棒ブチ込みてぇらしいな」 ああ、どうしよう…。颯斗兄が下品になっていく…。 「うん!俺、角谷しか考えられないんだ!」 てめぇも真面目に下んねーこと答えてんじゃねえ! 「この馬鹿がお前に言ったんだってな。男のケツ穴は女の穴より気持ちいい、だっけ?」 「うん。だから、歴代カノジョ達にお願いしてみたんだけど、ことごとく断られて、その度フラれてさぁ…。一番最近の佳奈ちゃんなんて、じゃあ男と遣りやがれ!でバチーン、だよ。ひっどいよね」 ひっどいのはてめぇだ、馬鹿。 「そんなんで、睦月の穴、狙ったのかテメェは…」 颯斗兄の声が震えて聞こえる。 だ…大魔王が……、恐怖の大魔王が怒っていらっしゃる……。 相馬、謝れ!すぐに謝れ!! 「だって、一度角谷だ!って思ったら、もう他の男じゃムリになっちゃって」 「たりめーだ。うちの睦月は世界一可愛い」 「うん。角谷は宇宙一可愛い」 「でも宇宙一美人なのは、角谷は角谷でも颯斗の方だぞ」 「テメェはだぁってろ、クサレ外道が!」 颯斗兄の口汚い罵りに、壱哉さんは素直に従って口を詰むんだ。 「で、一翔」 「はい!」 相馬、すっかり従順だな…。 正座して、背筋もピシッと伸ばして。 「お前は男が好きなのか?それとも女か?」 「女です!」 「…っ………」 迷いもなく真っ直ぐに答えた相馬に、俺は頭の天辺から冷水を浴びせられたような衝撃を受けた。 ……いや、違うか。 衝撃なんて、受けるわけもない。 ずっと前から知ってることだ。 何度も勘違いしそうになっては、思い出させられる。 そんな訳はないと思いながら、本当は相馬も俺を好きになってるんじゃないか、なんて。 いつの間にか甘い期待を抱いている自分。 何度も気付いて打ちのめされても、それでも何度も思ってしまう。 これ以上傷つき続けるのは…嫌だなぁ……。

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