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28.角谷兄弟と相馬兄弟の関係2
「颯斗兄、もう…」
颯斗兄の服の裾を引っ張って止める。
「わかってるよ」
限りなく優しい声音で、颯斗兄は微笑んで、頷いた。
そして表情を鬼軍曹に戻し、相馬に向き直る。
「一翔、お前にはバックOKの女を紹介してやる。そいつと付き合え」
「えっ、ダメだよ。俺、付き合ったら一途だもん。二股しないよ」
即答した相馬に、颯斗兄は眉尻をヒクリと上げ不快を示す。
「じゃあ、すぐさま今付き合ってる奴と別れろ」
「やだ、ムリ!」
「やだじゃねぇ!携帯貸せ。俺がそいつんとこ電話して断ってやる」
「角谷だよ!俺、角谷と付き合ってんの!」
叫ぶなり、突然ガバリと抱きしめられた。
途端に、鼓動がどくんと跳ね上がる。
「は…ぁっ!?──付き合ってねーよ!お試し期間だっつーからお前の気まぐれに乗ってやっただけだろ!」
「ちゃんとコイビトだって言っただろ、俺。角谷だって聞いてたじゃん」
「だからっ、次が見つかるまでって話だったろ!見つかったんなら俺はもう御祓箱だろーが!」
「見つかってないし、探してもない!」
抱き締める腕に力が篭った。
熱が…急激に上昇する───!
「ばかっ!放せっ、ばか!」
くっつくな!抱きしめられてるとか思ったら、心臓おかしくなるだろーが。顔も赤くなっちゃうだろ!
「なので颯斗さん、俺たち別れません!」
「……一翔テメェ…良く言った……」
「ありがとうございますっ!」
「褒めてねーよ、クソ馬鹿野郎!!」
「はっ!自分はただただ角谷を愛すクソ馬鹿野郎でありますっ!」
あぁ…もう。颯斗兄は滅茶苦茶怒ってんのに、角谷が馬鹿過ぎる所為で、軍隊コントみたいになってるじゃないかっ!
「それに、女の子紹介されても、多分俺ムリだよ。角谷以外じゃもう、そう言う気になんないもん」
俺の頭を胸に抱き寄せたまま、相馬が口調を戻して言う。
言葉がよく理解できなくて、その顔をじっと見上げた。
相馬は真剣な顔をして、颯斗兄に訴えかける。
「今日角谷が休みだったらさ、結構休み時間の度に女の子たちに囲まれてさ」
「ああ、そうかよ。そりゃあ羨ましいことで」
颯斗兄が冷めた視線を向けると、壱哉さんは気まずそうにそっと目を逸らした。
2人にも、同じような覚えがあるんだろうか。
…まあ、壱哉さんならあるんだろうな…。
「でもね、付き合ってとか、好きとか言われても、全然嬉しくなかったんだ。今までは女の子大好きで皆可愛く見えてたのに、なんか……」
言葉が見つからずに黙り込んだ相馬の頭を、壱哉さんがポンと優しく撫でた。
「女の子がみんな大好きってのはな、一翔。そりゃ、誰でもいいってことなんだよ。ある程度見た目が整ってれば、誰でも抱けただろ?」
「……うん」
………お前ら、兄弟のいいシーンみたいな顔して話してるけどな、語ってる内容は最低だぞ。
「ホントに好きな相手が出来たらな、他の人間なんかどんな可愛かろうがどんな美人だろうが、ヤラせてくれるならヤッてもいいかなぁ、とか思わなくなるんだ」
ほんと最低だな、壱哉さん。
颯斗兄、ほんとにこんな人のこと、好きなのかな……?
「あっ、わかるよそれ!俺も、愛奈ちゃんの巨乳見ても、うぉっ、やっぱデッケェ、ぐらいしか感じなかったもん。せっかく第2ボタンまで開けて見せててくれたのに」
「だろー?……てか、愛奈ちゃんの巨乳って、サイズどんぐらい?」
「こんぐらい」
俺のことを離して、自分の胸元に掌でこんもり膨らみを作って見せる相馬。
…俺も、なんでこんな男が好きなんだろう……。
激しくイラッときて、その腹を足の裏で蹴りつけ相馬が吹っ飛ぶのを見届けると、颯斗兄の隣に移動した。
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