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29.角谷兄弟と相馬兄弟の関係3

「……良く、分かった」 颯斗兄に腕を引き寄せられて、膝に座った。 横並びの相馬兄弟と対峙する形になる。 「壱哉(いちや)一翔(かずと)、テメェら、2度と俺たちに関わんじゃねえ」 「「やだっ!」」 「え…っ?」 俺が聞き返すより早く、相馬兄弟の拒否の言葉が被った。 「やだじゃねぇよ。お前らおモテになんだろ?好き好んで男にチョッカイ出す必要ねぇだろーが」 「チョッカイじゃねーよ。お前のことが好きだって言ってんだろ!! 颯斗!」 「今はキレイ系男子で済んでるかもしんねぇけどな、壱哉? 俺はババアにはなんねーんだよ。ジジイになんの」 「そんなの知ってる!」 「ああ、そう、知ってるだけだ。分かってる訳じゃねぇ。 それにな、お前1人なら話はマシだったが、弟まで巻き込みやがって、馬鹿かテメェは。うちはまだ長男の涼司がいるからいいが、テメェらんとこは2人兄弟だろーが。親に孫の顔、見せてやれねぇってことなんだぞ」 「それ、は……」 壱哉さんは、二の句を告げずに黙り込む。 「テメェの足りない脳ミソで、よっく考えやがれ。そんで、二度と好きとか言うんじゃねえ…」 膝に抱き込まれた俺には、颯斗兄の声が頭に直接響いてくるようで…… まるでそれが俺たちを包み込む世界の言葉のように聴こえていた。 世界が、俺の想いを否定しているように─── 颯斗兄の言ってることは、多分正しい。 互いにとって、角谷家と相馬家にとっては、そうすることが一番良いことなんだろう。 けど、あまりに近くて、俺には聞こえてしまったんだ。 きっと、誰にも気づかれたくなかった筈の、颯斗兄の本当の気持ちが、その吐息に交じって、伝わってきたんだ。 振り返って、颯斗兄の体を抱きしめた。 そんなに、平気そうな、怒った顔をして…。 俺と、そして誰より───壱哉さんを守るために……。 ───それでも、好きなんだね。颯斗兄……。 俺も諦めきれなくて、ずっと傍にいたくて、……だから分かるんだ。 一度手に入れたのに、手放さなくちゃいけない颯斗兄は、もっと辛い。 だから、何も手に入れてない今のうちなら、きっと、今の俺ならばまだ……… 「角谷!」 腕をグイ───と、強く引かれた。 「全然信じてくれないけど、俺、角谷のことちゃんと好きだから」 力強い腕に、苦しいくらい抱きしめられた。 ちゃんと好き…って、なに……? 「角谷のこと、ちゃんと大切にする」 ちゃんと、って、……なんだ? 「だから、俺のこと、信じて」 ───俺は、忘れていない。 いいこと思いついた!と、男と付き合えばいいんだ、と言いだしたこいつのことを。 華奢な男を探せばどこかに…と、イケそうな気がするという理由だけで俺を選んだことを。 愛せるように、頑張るって言ってた。 相馬は、頑張ったのか…?頑張った結果が、こうして、俺のこと…… そんなの、全然嬉しくない! 頑張んないと、俺のことなんか好きになれないくせに…っ!

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