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31.最後のキス1

「………颯斗兄たちは?」 顔を少しだけ、布団から出す。 外気に触れて、息が楽になった。 「なんか兄ちゃんが、颯斗さん担いで出てっちゃった」 息は楽なはずなのに、…息苦しい。 「あの、さっき角谷、さ…」 「…なに……?」 一緒にいたい筈なのに、同じ空間にいたくない。 「俺のこと好きだって…言った?」 「……言ってない」 「ずっと俺のこと、好きだった?」 「…っ、好きなんかじゃ……」 「うん…」 立ち上がると2段ベッドの上段より高い位置に顔が来る相馬は、頷くとこちらを見ながらふわりと微笑った。 あったかい笑顔。 太陽みたい。 ───だけど。 なんで……、なんで無理やり気持ちバラされて、笑われてるんだよ、俺は……! 大好きなはずの笑顔が、やけに腹立たしく感じる。 普段よりも低い沸点に怒りが到達するのは、とても簡単なことだったようで……。 っとに、ムカつく奴だな、こいつは!! ボン!と頭の中で何かが爆発する音が聞こえた気がした。 「っるせー!好きで悪かったな!だがそれも今日限りだ!明日からお前みたいに好きでもねー女と遊びまくってやる!俺のこと好きだっつーんなら、てめぇも好きな相手、女にとられる気持ち思い知れってんだ!」 そんで、やっぱり自分はそう言う気持ちで好きなんじゃなかったんだって、思い知ればいい。 そうすればお前は、そこで軌道修正が出来る。 好きでもない男を抱いたとか、親友と過ちを犯したとか、そんな過去を引きずらないで生きていける。 「……ごめん」 相馬の指先が頬に触れて、体がびくりと震えた。 「ごめん。俺、そんな思いさせてたんだな…」 そんな顔、させたかった訳じゃないのに……。 手を伸ばすと、大切なものを守るように、両手で包み込まれた。 「でも、嬉しいよ」 ふわりと、しあわせそうに微笑むから、手を引いて距離をとる。 「逃げないで、角谷。……それとも俺のこと、もう嫌い?」 そんな悲しそうな顔、しないでほしい。 ……嫌いになれたら、どんなに楽だろう。 だけど、やっぱり好きだ。 ずっと、好き───

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