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32.最後のキス2
「相馬…、付き合うとか、やめて、…親友に戻ろう?」
涙で相馬が滲んでく。
どんな表情して俺の話を聞いてるのか、全然分かんないや…。
「……やだよ。俺、他の奴に角谷とられるとか、絶対やだ」
「…じゃあ、これから先、誰とも付き合わないって、約束する。だから…」
「それじゃあ、角谷が幸せになれないだろ」
「しあわせ…なんて……」
きっとそれは、個人個人で違うものだから……。
俺にとっては、ただ相馬のことを想って生きる一生が、しあわせなものなのかもしれない、し……
「…平気、俺……」
「…そんな、悟ったような顔しないでよ」
「……わがまま、だな」
頭をぽん、とはたいてやる。
これで、いつも通りの2人に戻れる?
今まで通り、親友でいられる?
「じゃあ、これでもうリセットな。俺がお前を好きだったのは、過去のことだ」
「っ…角谷!」
「お前が悪いんだぞ。俺の体、つけ狙うから。つーことでお前は、颯斗兄に紹介してもらった女に、気持ちよくしてもらいなさい。スゲーM女かもしんねぇけどな。ま、それならそれで、望む以上にご奉仕してもらえそうだし…」
「どうしても、俺じゃだめ?」
…よく、言うよ……。
お前じゃなきゃダメな俺に、よくそんな質問が出来たな。
無神経、意地悪、馬鹿。
…ばか……。
答えられずにいると、両手が伸びてきて、腕を掴まれる。
「じゃあさ、角谷…。最後に、キスさせて」
……最後…か…。
うん、最後だ。
俺が、戻ろうって言ったんだから。
「それで、ちゃんと終わらせるなら…」
頷くと、相馬は俺に向けて両手を広げた。
ベッドからお前の胸に飛び込め、って…?
馬鹿だな。……ばーっか。
仕方ないからベッドの縁に座って、その胸目掛けて滑り下りる。
…これで、満足か?
硬いだろ?俺の体。これでも、…お前ほどじゃないけど、部活で鍛えた男の体なんだよ。
「座ろうか」
体を放して、相馬がぽつりと言った。
「…座るの?」
うん、と頷くから、腰を下ろした相馬の隣に、少し間を開けて座った。
肩に手を置かれて、瞼を閉じる。
首の後ろと腰に、手が回される。
「角谷、好きだよ」
触れた部分が言葉の形に動いて、唇をくすぐった。
嘘でも嬉しい……
嘘は嫌だ……
真逆の気持ちが同時に湧き上がって、頭がおかしくなりそうだ。
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