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43.兄たちの事情5
完全に…嫌われた───
颯斗はもう一度、今度は深く息を吐き出す。
泣きそうだ。もう、このまま一緒にいたら、絶対に泣く。
そんな姿、こいつに見せられるか!
ずっと我慢してたのに、気付かれないようにしてきたのに、なんだよコレは。
俺のストッパーなんて、2人きりになったら簡単に外れちまうような脆いもんだったのかよ……。
「悪ぃけど、俺は帰るからな。明日は1人で観光でもしてくれ。俺とおんなじ部屋になんか、泊まりたくねぇだろ」
「あ、それは平気」
手も、身体も離さずに、何でもないことのように答える壱哉を、颯斗はキツく睨みつける。
「だって、俺の方が強いでしょ?」
「…っ……!!」
腹立たしい事この上ない。
しかし現状、押さえつけられて動けないことも事実だ。
「寝てる時、襲われるかもしんねーぞ」
「だーかーら、襲われるのは嫌だって」
「だから、帰らせろっつってんだろが!」
「俺、淋しいと寝らんないよ?」
「一晩中起きてろ!」
「だからー!」
壱哉は颯斗を見下ろすと、その両手首を合わせ、右手一つで押さえつけた。
「もういいや。順番すっ飛ばすから」
そして顔を寄せると瞼を下ろし、颯斗の唇に自分の唇を───押しつけた。
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