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44.兄たちの事情6*

頭が、真っ白になった─── 颯斗は丸く見開いた目で、起こっている出来事を把握しようと目の前を必死に見つめる。 近すぎて、良く分からない。 唇に触れた感触が、柔らかくて、温かくて、頭がぼんやりしてくる。 「考えないでいいから、俺のことだけ感じて」 壱哉のこと、だけ……? 目を閉じると、髪を撫でられる感覚に気が付いた。 髪触られるの、気持ちいい…。 手首を掴んでいた手が外れて、頬に触れた。 「やっぱり眼鏡、色っぽい」 目を開くと、壱哉が顔を見つめて、愛しそうに頬を撫でていた。 「どっちが…」 そっちの方がよっぽど色っぽい顔をしていると言ってやろうとした声は掠れて、言葉にならなかった。 「ん…」 悪戯っぽい顔をして舌を出してくる壱哉に誘われるように、颯斗も舌を少しだけ差し出す。 互いの舌先が触れたのが合図になり、壱哉からのキスは一層深いものになった。 「…ふ…ぁっ……」 開いた唇から、甘い息が漏れる。 自分のものとは思えないような濡れた声。 颯斗は羞恥に顔を赤らめると、これ以上声がこぼれないように、壱哉の唇と重なり合うようにして唇を押しつけた。 「ん……っ」 今度は壱哉が声を漏らせる。 そうして深く唇を合わせるうちに、壱哉はふと、絡み合う脚に颯斗が腰を擦り付けていることに気づいた。 唇を離して、フッと笑う。 「颯斗、俺も…」 瞼を上げた颯斗の視線に、抑えていた熱が一気に上昇した。 「キスだけでこんなになっちゃった。見て見て」 その手を取って、自らの熱くそそり立つ場所へと導く。 ───と、 「っ……なにしてやがる壱哉っ!テメェコロスぞ!」 正気に戻った颯斗が壱哉を突き飛ばし、ベッドの端へと後ずさった。 「なに考えてんだよっ!馬鹿じゃねーの!馬鹿っ!このエロガキ!!」 ボキャブラリーに乏しい罵倒。相当動揺しているようだ。 突然怒鳴りつけられた壱哉の方は、きょとんとして自らの身体を抱きしめる颯斗をただ見つめる。 「変態!馬鹿!普通襲うか!」 「えっ…?いやいや、先にぶち犯す、とか言ってきたの颯斗の方だし」 「うるせー!だったら黙って犯されろ!」 「だから嫌だって、それは」 「だったら、…帰らせろ……」

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