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第12話 こんなの初めてです★

 ニコが目を覚ますと、爽やかな風が通り抜けた。空は赤く染まり、日が傾いていることを知る。  起き上がって辺りを確認すると、バーヤーンはやはりいなかった。  こんなのが魔王の孫とか……!  淫夢の中での、彼の言葉が蘇る。  分かっている。絶対的な力を持つ魔王一族が、無駄な殺生を好まないなんて、魔界の摂理もぶち壊しだ。魔族に取り入り勝ち組に入ろうと、泥水を啜って必死に生きている一般魔族にしたら、ニコやショウの存在こそふざけるな、と自分でも思う。  それでも、ニコは自分の信念を曲げることはしたくない。 「多分……おそらくですが、バーヤーンは必死で成り上がろうとしているんでしょう……」  『洗礼』が必要だと言い切った彼は、それ程までに力と権利に固執する理由があるということ。  その理由を、ニコは知りたいと思う。ただの力の誇示じゃなく、上流階級にそこまでして上りたいと思う理由を。  だからと言って、『洗礼』を許した訳じゃない。  ニコは立ち上がると走り出した。身体はスッキリしているけれど、運動をしないと落ち着かない。  屋敷に帰ると、珍しくショウが仕事を終えて待っていた。一緒に食事をと誘われたので、急いで部屋に戻って詰襟の黒服からラフな部屋着に着替える。  ふとその脱いだ服を見て、自分のやっていることに意味があるのだろうかと考えてしまった。バーヤーンのように、どうしても上流貴族になりたいという魔族はきっとほかにもいるだろう。そんな魔族にとって、自分は邪魔者でしかない。  バーヤーンは必死だった。ニコに抗おうとしてもできず、口では抵抗していた。それを結果的に絶対的な力でもてあそんだのはニコだ。 「……っ」  ぞくり、と背筋に何かが通った。じわりと顔が熱くなって、ハッとして下半身を見る。  先程淫夢でスッキリしたはずなのに、そこは熱を帯びていたのだ。 「お、お父様と食事の約束してるんですから……」  はあ、と息を吐き出し落ち着かせようと意識を逸らす。  すると、どくん、と心臓が大きく脈打った。同時に痛いほどニコの怒張は主張し、思わず前かがみになる。 「い、……た……っ」  股間を押さえて内股になり、その場に座った。けれどそこは収まるどころか、早く触れ、擦れとどんどん体液を溢れさせているのが分かる。 「嫌だ……っ」  欲望のままに触ったら、屋敷の使用人もただでは済まない。父がそうだったように。  しかしそこは何か別の意志を持っているかのようにじわじわと下着を濡らし、とうとうニコの手にも感じられるほど濡れてしまった。  触りたい欲と触りたくない理性がニコの中で戦い、股間を押さえたままうずくまって床に額をぶつける。  するとダメ押しのようにニコの後ろが疼いた。 (ダメだ、触りたい触りたい触りたい触りたい……っ!)  少しだけ。少しだけ触って快感を得られれば、スッキリできるはず。極力魔力は抑えて、そっと致せば周りにも影響はないはず。  そんな考えが頭をよぎる。  そっと、親指で服越しに先端の敏感なところを撫でた。すると自分でも思ってみないほど腰が跳ねて、泣き声のような喘ぎ声を上げてしまう。  どうしよう、気持ちよすぎる。 「ふ……っ」  ニコは欲望に抗えず、痛くて腫れたそこを慰めるように撫でた。指先で優しく撫でただけなのにすぐに射精感が迫ってきて、うずくまったまま顎を上げる。 「ぅ……、──ああっ!」  ビュル! と勢いよく、下着の中で爆ぜた音がした。それは何度も何度も勢いが衰えずにニコを襲い、ついには服から滲み出てしまう。  何だこれ、こんなの知らない。ニコはベタベタするズボンを下着ごと脱いだ。夢精でもこんなには出なかった。しかもまだ痛い。 「……嫌だ、……嫌だ……っ!」  そう思いながらもニコの手はまたぺニスに伸びていく。軽く手で輪を作り、カリの部分を軽く二、三度扱いただけでまた達した。でも、それでもまだ収まらない。  ニコは恐怖を覚えた。こんなに強い欲求は初めてだ。誰かを……誰でもいいから喰らいたくて、その欲求を鎮めるために指を後ろに突っ込む。 「あ、あ、……あああ!」  右手で後ろ、左手で前を慰め、がむしゃらに動かした。けれど何度射精しても、何度後ろでイッても、恐ろしいほどの欲求が溢れてくる。これが自分だなんて信じたくなかった。 「収まれ……収まれよ……っ!」  ぐちょぐちょと濡れた音と、ニコの嗚咽と喘ぎ声が部屋に響く。  誰か助けて。そう言えたらよかった。けれどこんなに強い性欲を持て余しているインキュバスの相手など、できる魔族はそういない。  ──案外相性がいいのかもよ?  そう思って思い出したのは父の言葉とバーヤーンだ。あの時は冗談じゃないと思っていたけれど、確かに淫夢に誘えたという時点で相性がいいのかもしれない。 「……っ、バーヤーン……っ!」  ドクン、とニコは何度目かの熱を吐き出し、息も絶え絶えにここにはいない魔族の名前を口にした。

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