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第27話 仕事としてシテください★

 ニコたちは食事を終えて自室に戻ると、以前は趣味と運動だった時間に、バーヤーンとの夜伽が加わる。 「あ……っ、ん……!」  ガクガクガク、と全身が震えた。愛撫はなしでと命令した通り、バーヤーンはすぐに中へ入ってきて、ニコの四つん這いになった足が笑う。  顔が見えない方がいい、とバーヤーンが後ろからニコを貫く体勢になったけれど、やはり彼との相性はよく、入れただけでもゾクゾクが止まらなくなった。バーヤーンを欲している顔を見られたくないから、ニコはシーツを掴んで快感に耐える。 「ニコ、キツくないか?」  後ろから、こちらをいたわる声がした。その声はすでに上擦っていて、中に入った猛りもこれ以上ないくらい張り詰めている。 「支配、してくださいと、言ったでしょう……っ」  僕の心配は無用です、と言うと、中の怒張の体積が増した。ニコは声もなく喘いで彼を締め付け、入れただけでせり上ってきていた何かが脳に達し、ニコは絶頂する。 「うぐ……っ!」 「……っ、痛え……っ」  ニコの絶頂と共にバーヤーンは声を上げ、中に熱を注ぐ。二人とも何もせずに達してしまったようだ。 「あ、あ……っ!」  ニコは休まず第二波が来る、とベッドに顔を突っ伏した。止まらない。このまま欲望に任せていたら殺してしまう。なのにバーヤーンと繋がったことが嬉しくて気持ちいい、とさらに興奮した。 「あとどれくらい欲しい? ニコ」 「ふ、ぐ……っ」  少し落ち着いたのか、バーヤーンはそんなことを聞いてくる。そんなことでも、ニコの意見を聞いてくるのは支配じゃない。それに今までセックス中は淫魔様と呼んでいたのに、ここへきて名前で呼ばないで欲しい、とニコは思う。 「支配しろと言ってるでしょう!」 「してるじゃねぇか。さっきからイッてんのに、動かないで焦らしてやってるだろ?」 「ひあ……っ!!」  ニコは背中を大きく反らした。腕を突っ張り顎を限界まで上げ、ガクガクと痙攣する。こんな、自分だけ達してしまうのは支配じゃない。バーヤーンだけが満足するまですればいいのだ。 「きみが! 好きなように動けばいいんです!」 「……それでニコが満足しなかったら意味ないだろ」 「──うっ、あ……っ!」  バーヤーンが動き出す。粘膜が擦れ、中のいいところに当たる。ニコは悲鳴のような嬌声を上げ、再びシーツに突っ伏した。  太ももが震えて止まらない。足先はピンと伸びて宙に浮いている。気持ちよすぎて何も考えられない。 「……っ、ニコ……っ」  グッと、バーヤーンが身体を倒してきた。片腕をニコの前に回し力強く抱きしめられ、もう片方はニコの手に伸びてきて握られる。ニコはまた一瞬視界が真っ白になった。 「うう……っ」  バーヤーンの声が、息が、ニコの耳に甘く響く。やめてくれ、その声で僕を呼ばないでくれ、と思ったら涙が溢れた。  繋がるたび、バーヤーンが好きだと思い知らされ、そのたびにその想いが溢れて破裂しそうになる。だから顔を見たくない。声も聴きたくない。でもこれをしないと、また罪のない魔族を殺してしまう。  ニコが泣いていることに気付いたらしい、バーヤーンはなだめるようにニコの後頭部にキスをした。熱い息が頭にかかり、ニコはまた大きく腰を震わせ、先端から熱を吐き出す。 「いや! あっ、あっ、……あああ!」 「ニコ……っ」  ぱん! と腰を強く打ち付けられ、バーヤーンが動きを止めた。苦しそうに唸りながら二度目の絶頂に達した彼は、素早く楔を抜くとニコの身体をひっくり返す。 「う、んんんんんーっ!」  彼がすぐに入ってきた。力が入らなかったニコは抵抗できない。顔を見なくて済む体勢だったのに、わざわざ正常位に変えられ、ニコは横を向いてシーツを破れんばかりに握る。  萎えないバーヤーンはまだまだやる気だ。ニコの脇の下辺りに手をついて再び動き出した。突かれるたび声が上がるニコは、感じている声を聞かれたくなくて手で口を塞ぐけれど、その手を取られる。  せめてもの抵抗で目を閉じて口をつむぐと、チュッという音と、温かい感触、熱い息が手のひらに触れた。手を引こうとすると噛まれ、その痛みさえも切なく胸を締めつける。  いやだ、優しくしないでくれ。一切の愛撫はしないでくれ。きみが好きだと言いたくなるから。きみも僕を好きなんじゃないかと勘違いしそうになるから。 「いやだ……っ!!」  また涙が溢れた。快感と切なさで頭が混乱し、嗚咽を上げながら揺さぶられ、何度も高みに昇る。 「……っ、ニコ……」  バーヤーンがニコの両頬を手で包んできた。いやいやと首を振るけれど、ぐっと力を込められて正面を向かされる。 「ニコ……」  彼の吐息が唇にかかった。まさかと思ってニコは叫ぶ。 「きみは僕の世話係だろ! 僕の言うことが聞けないのか!」  目を閉じたまま、仕事は仕事として全うしろ、と思いを込めて言うと、頬に噛み付かれた。 「い……っ!!」  悲鳴を上げると、そのまま激しく貫かれる。肉がぶつかり合う音が大きく響き、ニコの足はビン、と天に伸びた。  今キスをされたら耐えられなくなる。バーヤーンはどうして自分を優しく扱おうとするのか。 (僕が主人だから以外に理由はないはずだ!)  そうだ、そうに違いない。彼は魔王の元で働くために、ニコを利用しているだけなのだから。  頬に噛み付かれたままガンガンと突かれ、いつかと同じように猛獣に襲われているような気分になる。バーヤーンは声を上げながら力の限り腰を打ち付けてきて、ニコはなすすべもなく何度目かの絶頂へ昇りつめていった。

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