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第10話 【ラルフ視点】最高に可愛い、僕のビスチェ

本当に腹立たしい。 なんなんだ、口を開けば運命の番、運命の番、って。 確かに子供の頃は『運命の番』に憧れていた。こんなに好きなんだ、きっとビスチェが『運命の番』に違いないってそう思ってた。 ビスチェはあんまりバース性の話には興味をそそられなかったみたいで、魔術の本に夢中だったのが悔しかった。ビスチェの興味を独占している魔術が憎い。 ちょっと成長してくると、今度はビスチェが『運命』じゃなかったら……それどころか、オメガじゃなかったらどうしよう、って不安になった。 僕は伯爵家の跡取りだから、ビスチェがオメガじゃなかったら、男同士で結婚まで持ち込むのはなかなかにハードルが高い。 それから僕はたくさんバース性の専門書を読み漁った。 バース性がどう決定するのか、後天的に変えられたりするのか。調べても調べても、バース性を故意に変更できるような記述はなくて、僕は祈るしかなかった。 だから、ビスチェがオメガだってわかった時、僕がどんなに嬉しかったか。 部屋で一人喜びの雄たけびをあげるくらいには嬉しかった。 それなのに。 それっきりビスチェの様子がおかしくなってしまった。 僕を避けるようになったし、二人きりになろうとしない。僕と目が合うとすぐに目を逸らすし、悩まし気なため息をつくようになった。 もしかして、ビスチェはオメガになるのは嫌だったんだろうか。 それとも、僕を意識してくれてる? どうしてもビスチェを逃がしたくなかった僕は、少しだけ様子を見てみることにした。あまり性急に追い詰めて拗れるのは困るし、あまり近くにいすぎると我慢できなくてうっかり襲ってしまうかもしれないし。 そう思ってつかず離れず、ビスチェに近づこうとする不埒なアルファは陰で徹底的に排除していたある日。 それまでの悩ましげだった雰囲気を一掃したように晴れやかな顔をしたビスチェが現れた。 にっこにこで僕に駆け寄ってくる姿を見るのは久しぶりだ。 魔力の色を移したような淡い水色のショートヘアがふわふわゆれるのも可愛いし、相変わらず折れそうに華奢な手足も愛しくてたまらない。儚げに見えてもおかしくないのに、好奇心いっぱいの瞳と表情が生命力に溢れた印象につながっている。 ああ、最高に可愛い。 なんて可愛いんだ、僕のビスチェ。 感動する僕に、ビスチェは輝くような笑顔でこう言った。 「なぁラルフ、オレと結婚しない!?」 「えっ、する!! 結婚する……!」 即答した。 まさかビスチェからプロポーズしてくれるなんて。

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