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 夕貴が我に返った時、自身の体内の最奥に埋められた宏海の灼熱が薄い内襞を激しく擦りあげていた。 「っふ、あぁ――っ! あ、あぁ……熱いっ。奥が……当たって……る!」  だらしなく開いたままの唇からは唾液が糸を引き、乾いたシーツへと浸み込んでいく。もう何度達しているのか数えることもできないほど、夕貴は白濁を撒き散らしていた。しかし、それ以上に彼の中に奔流を迸らせていたのは宏海の方だった。  いつになく夕貴の中が熱く、うねっている。最奥に当たる器官の入口が誘うように奥へ奥へと宏海を誘い、吐き出すものを一滴残らず吸収しようと蠢いているのが分かる。  それはいつも以上に夕貴のフェロモンにあてられた宏海だけでなく、夕貴自身も分かっていた。  宏海の硬い先端が奥の壁を突くたびに、わずかな痛みを伴いながらもその刺激は底なしに甘く全身を痺れさせる。  ツンと天井を向いて硬く尖った胸の飾りに歯を立てながら腰を大きくグランドさせた宏海が、獣のような光を湛えたこげ茶色の瞳で夕貴を見つめた。その視線に射ぬかれただけで、肌が粟立ち中のモノをきつく喰い締めてしまう。 「あぁ……っ! 宏海……ちょ、だい! 俺の中に……いっぱい、頂戴っ」  離れることを恐れるかのように腰をせり出して密着させた夕貴に、宏海は汗を滴らせながら薄っすらと口元を綻ばせた。 「綺麗だよ、夕貴……。こんなに綺麗なオメガはどこを探してもいない……」 「ハァ……ハッ……ひ、ろみ……っん! 俺――っ」  顎を上向けたまま何かを言いかけた夕貴の唇をそっと塞いだ宏海は、何度も唇を啄みながら掠れた声で言った。 「もう何も言わなくていい。お前の答えはもらったから……」  触れ合ったままの唇が震える。引き合う銀色の糸が途切れることなく舌先を突き合わせた。  暗く冷たいままだった夫夫の寝室――。  そこは互いが発する熱と甘い匂いが満ち、汗ばんだ肌が幾度となく重なりぶつかり合う淫靡な音が響いていた。  夕貴の中で再び宏海が弾ける。その熱さと勢いに、新たな快感と何とも言えない思いが胸に溢れた。 「あ……あい、し、てる」  強く閉じた目尻から一筋流れた涙を宏海の舌が掬い取る。 「もう、泣かなくていい……。俺たちの運命は……新たに動き、始める」  宏海の言葉には絶対的な自信と、力強い確証があった。  優秀なアルファは不可能を可能にする力も持ち合わせてるに違いない。  夕貴は彼の背中に爪を立てて熱い息を吐いた。いつも以上に長い射精を最奥にある神秘の洞窟に受け入れながら、この上ない幸福感に満たされていた。

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