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晴らされた執念13
扉越しに類沢の声がする。
父もそばにいる。
声が早く出ないだろうか。
さっきの悲鳴はみぃずきだった。
やはり、電気は外にも流していた。
大丈夫かな。
大丈夫なワケがないよな。
おれだってこのザマだし。
少し息が整い、指を動かす。
足先がビクビク動いている。
心拍もまだ速い。
「勝手に入るのはよくないだろう」
「質問を訂正しますね。この扉壊しても構いませんか」
類沢の声色が変わった。
キシ。
床を踏む音。
何をする気だ。
そんな父の顔が見えるようだ。
おれはうつ伏せのまま、その行為を待った。
ダンッ。
バキンと扉の金具が外れる音が後を追う。
頭上のドアが吹っ飛んだ。
バラッと木片が飛び散る。
轟音を立てて床を跳ねた扉は窓に激突して倒れた。
カシャン。
木霊するようにガラスが落ちる。
一瞬の出来事。
初めて見た。
ドアって吹っ飛ぶんだな。
おれはぼやけた視界でそれを見ていた。
「……安い造りだね」
類沢は小さく呟いて部屋に入った。
すぐにおれを見つけ、担ぎ上げる。
「お待たせ、瑞希の代理だよ」
「セ……ンセ」
父が茫然とおれ達を眺める。
「貴方の仰る通り、眠っていましたね」
ニコリと微笑み、類沢は階段を降りた。
はずだった。
「渡すものか」
ガクン。
おれを背負う類沢の膝が床に着く。
上体の重心がズレ、前に傾く。
次の瞬間には父の腕の中にいた。
目を見開く。
類沢が見たことのない形相で振り返ったのだ。
恐ろしい、とか。
怖い、とか。
違う。
無表情はそれに勝る。
眼に光が無い。
鈍い漆黒が揺れている。
思い切り蹴られた脚を気にすることもなく、スッと立ち上がる。
「……はは、あははは」
口元だけで類沢は笑った。
乱れた髪を払いもせずに、詰め寄る。
「くそっ」
父は開いたドアに飛び込んだ。
すぐに類沢が追う。
おれを床に下ろし、父はナイフを構えた。
最悪だ。
それはおれが柱を切るため使ったナイフだった。
「帰れ」
「お断りします」
「哲のためなら人殺しだって出来るぞ」
父さん。
床から見上げる。
瞳孔が開いている。
あんたは、
どこまで
狂ってしまったんだ
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