201 / 238

晒された命17

 真実は時として残酷。  遠くで声がする。  類沢先生?  サイレンも聞こえる。  体が揺れている。  目は開いたり、閉じたり。  感覚が鈍く、世界が遠い。  俺は、今、生きてるのかな。  そう疑問になるほど曖昧な生の中、思い出すのは今朝からのこと。  先生、そばにいますよね。  俺は貴方に色々告白しなければならないことがあるんです。  もし良かったら……聞いてくれませんか。  意識は簡単に闇に落ちてゆく。  こないだ見たロープはそこにない。  もがきながら落ちるのも、無抵抗に落ちるのも、そう変わらないかもしれないな。  だから、何故か笑えてきた。  西雅樹。  きっと驚いただろうな。  でも、誓ったんだ。  あんたに類沢先生は殺させないって。  それを破ったあんたが悪い。  あんたが悪いんだ。  家に帰ったら、塀にもたれる人物を見つけた。  近寄る前に、相手が気づく。  片手を上げて笑う。 「朝帰りか、宮内?」 「……西」  なんの用だ。  裁判の催促か。  だが、俺も会いたかったのは事実。  確認したいことがある。 「上がったら?」 「どうも」  玄関が閉まる。  その音が心臓を揺らした。  ああ、そうか。  今日かもしれない。  決断の日。  リビングに案内し、テーブル越しに座る。  雅樹の私服は初めて見た。  蒼いジャンパーに、黒いキャップ。  デニムのパンツ。  イメージ通りといえばそれまで。  ただ、なんで上着を脱がないんだろう。  そこだけが違和感だった。 「なんで家知ってたの?」 「仁野有紗って子に聞いた」  有紗……  俺は拳を握った。  なにが嬉しくてあいつにバラされなきゃならないんだ。  本当にいつも余計なことをしてくれる。  まあ、いい。  冬休み明けまでは会わないし。  文句も言えない。  言う気もない。 「彼女?」 「……嫌な冗談」 「ははっ。かわいそ」 「で、何の用?」  飲み物も出さない。  友達でもない。 「あー……いきなり話す話でもないからよ。まず、裁判に出てくれるか教えてくれないか」 「え?」  それが前置き?  本題じゃないのか。  頭が痛い。  机にもたれ、ニヤリと笑う雅樹。 「理由も教えて欲しい」 「出ない」  雅樹が無表情になる。  まるで今すぐ殺してやろうというよな、鋭い目になった。

ともだちにシェアしよう!