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郷に入ればホストに従え17

「瑞希ってやっぱり可愛い~」  ヘルプに入り、同じセリフを何度か云われる。  黒髪のショートの女性と、ブロンドの長髪の二人組だ。  目の前には類沢がいるため緊張は高まる一方で。 「そ、そうですか」 「ねぇ、雅。この子のアフターとるのはルール違反?」  類沢はニコリと笑って彼女の手を優しく握る。  だが、俺は見逃さなかった。  彼の目が冷たく光った一瞬を。 「また僕を試すんですか?」 「え」  彼女の頬に手を添える。  もう、多分類沢しか見えてない。 「……」  なんだろ。  周りには聞こえない声で何か囁いた。  彼女の顔が蕩けた。  なにを言ったんだ。  隣の女性も気になるように、身を傾けている。  俺は二人の世界を邪魔せぬよう、お酒を作った。  指名。  選ばれる立場。  なのに、類沢のような存在もいる。 「紫織さん! お待ちしてましたよ」  紅乃木のような存在もいる。 「千夏ぅ! 会いたかったわ」 「もう飽きられちゃったのかと思ってましたよ、お姫様?」  千夏のような存在もいる。  不思議だ。  俺に来る指名客なんているんだろうか。  時間が来て、他の新入りとチェンジし出迎えに向かう。  その途中、あの瀬々がいた。  怖い。  俺は道を譲った。  通り過ぎる瞬間、彼はトンと傷痕を叩いて行った。  その場で崩れそうな痛みに、歯を食いしばって耐える。  瀬々の背中は愉快そうに揺れる。  指名客の元か。  いつまでも行っててくれ。  表情をつくり、足取りを確かに歩き出す。  憂鬱だ。  これからもこうした嫌がらせを受けるのか。  早いところ稼がないと。 「ようこそ、シエラへ!」 「あら? 可愛い子がいるじゃない」  俺に真っ直ぐ歩いてくる女性。  香水の香りが掠める。  その人は俺の髪をスッと撫で、赤い唇で微笑んだ。 「あなたを指名するわ」 「篠田蓮花さん?」 「そう。よろしくね瑞希」  篠田。  篠田篠田。  あれ。  なんか聞き覚えが。 「失礼ですが、チーフと面識が?」  蓮花はちらりと事務室を見る。 「ええ。従兄弟よ」  篠田チーフ。  知ってるのかな。 「そんなことより、瑞希」  そんなことって。  蓮花は腰まである黒髪を靡かせ、身を寄せてくる。  急にドキドキしてしまう。 「あなたのこと、教えて?」

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