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超絶マッハでヤバい状況です10
翌日出勤すると、店がやけに騒がしかった。
まだ開店前だが。
中央にホストが集まっている。
類沢が俺を置いて篠田の元に行く。
「何があった」
「名義屋がうちの情報を売っているらしくてな。客が数人連絡取れなくなっているんだ」
名義屋?
俺は首を傾げて、輪に近づく。
羽生三兄弟が並んでいる。
類沢に付くメンバーも囲む。
端には瀬々の派閥もいた。
「連れ戻してくればいいんじゃないの」
NO.2の紅乃木が髪を掻きながら言った。
みんなが注目する。
「もとはうちのだろ。連れ戻してくればいい話しじゃん」
「連絡が取れないのにか?」
千夏が口を挟む。
ざわざわと派閥の中で話し合いが起こる。
「いや、いい考えだと思う」
類沢の一言でしんとした。
「少し名義屋の動向を調べてたんだけど、ある店で決まって客達を集めているらしいんだ」
「どこだ?」
篠田が前に出る。
俺は話に置いていかれていた。
「歌舞伎町の中でも新しいクラブなんだけど。"インテイス"って名前の。すぐ行ける距離だよ」
「なら、行こうよ」
紅乃木がソファから立ち上がる。
ポケットから折りたたみナイフを取り出し、指先で回した。
鮮やかな手つきを、つい目で追ってしまう。
そして思った。
ここは怖い人が潜んでいる。
何人も。
「人のモノ盗んだらどうなるか……教えてやりにさ」
「紅乃木。気持ちはわかるが、暴力沙汰は禁止だ」
篠田が制する。
紅乃木は冷たく睨んで、ナイフを握り締めた。
いつもの客への笑顔はない。
気配さえない。
「シエラまで売られちゃ終わりだよ?」
「それはそうだが。類沢、どうするつもりだ」
「紅乃木に賛同」
「おい」
「気持ちはね。ま、理性に従うなら交渉に行くかな」
またホストが動揺する。
「交渉?」
声をあげたのは千夏。
自分のスーツを着た一夜の隣。
「一兄に恥かかせやがった連中に何を譲歩するってんです?」
わかった。
ここでの発言権はナンバーに入った者にしか与えられないのだ。
だから、自分の派閥の意見を代表して口を開く。
「譲歩はしない。客も渡さない」
ハッと瀬々が笑う。
「ならどうする?」
「向こうを潰さない。それが交換条件だ」
篠田がなにか言おうとしたのを留めさせる。
「勿論、客を盗みはしないよ」
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