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超絶マッハでヤバい状況です23
俺は少し飲み過ぎて、夜風に当たりに席を立った。
冷たい空気に晒される。
店の周りは閑散としていた。
歌舞伎町でも奥まった場所だ。
フラツきながら、壁に背中を預けて空を見上げる。
曇った空。
もう煙は見えない。
鎮火したんだろうか。
ガサッ。
なにかビニールが擦れる音がした。
同時に視界が無くなる。
地面に頭を着いたとき、誰かに組み伏せられたのだと悟った。
痛みが後から襲ってくる。
「……若い新入りだな?」
誰だ。
顔を上げたいのに動かない。
取り忘れていたイヤホンが外れ、転がっている。
そうだ。
俺は見知らぬ男が次の行動に移る前に、ボタンマイクに早口で伝えた。
「超絶マッハでヤバい状況です」
肩を掴まれ起こされると、口をガーゼで塞がれた。
匂いを嗅いだ途端意識が遠くなる。
顎を持ち上げられ、無理やり吸わされる。
肺を犯す香りに、全身から力が抜けていく。
パタンと手の甲が腿に当たった。
「るい……」
口も満足に開かない。
路地に引きずりこまれる。
車があった。
灰色の外車。
二人の男が車から降りてくる。
「シエラの奴は仕込んでるからな」
そう言って服を脱がせる。
トランクに無造作に入れられた。
これで連絡手段は失った。
携帯も。
後部座席に横たわり、ドアが閉められる。
さっきまで、あんなに騒がしかったのに。
エンジン音だけが支配する。
怖い。
怖い。
どこに行くんだ。
若い新入りと言っていた。
ってことは始めから俺を狙っての行動だ。
なんで。
シャツと下着姿で震える。
寒いっての。
スッと太腿を手が触る。
冷え切っていたせいか、凄く熱く感じた。
「おい」
運転していた男が呼びかける。
「悪戯はするな」
「はいはい」
手が離れた。
でも、俺は恐怖に震えが止まらなかった。
悪戯?
こいつら、なにをする気なんだ。
「傷が付くと使い物にならない」
「それもそうだな」
息が荒くなる。
さっきの匂いのせいか。
脚を摺り合わせる。
ハッハッと呼吸が辛くなる。
「こいつ上玉だな…」
何の話なんだ。
類沢さん。
誰か助けてくれないのか。
そこで気づいた。
イヤホン……
みんな外してなかったか?
絶望が押し寄せる。
なんで、外に出ちゃったんだ。
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