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俺は戦力外ですか04

 スッと輪の外から回って前に出てきた細身の男。  歳は二十後半だろうか。  大人びた落ち着いた雰囲気。  頭のラインに沿うようなストレートの黒髪。  女性のボブのように耳元で切り揃えているのが、妙に存在に合っている。 「あいつ本当に№に入りやがった」 「晃が抜かれんのか」 「浩はなにしてんだよ」  ざわめきが断片的に聞こえる。  話題の人物なんだろう。  篠田が目を細めて給与を差し出す。 「維持するのは大変だぞ」 「まだ上り続けますよ」  不敵に笑んで、類沢を一瞥する。  その一重の眼が氷のように凍てついた。  なんて目で見るんだ。  殺気すら感じられる眼光。  類沢がどんな顔をしているかここからは見られないが、あの二人の間には入りたくない。 「愛ってだれ?」  一夜に尋ねたが、彼も驚きから抜けられていないようで茫然と頷いただけだった。  あとで類沢さんに聞こう。 「今月は新入りが二人入った。瑞希に拓だ。虐めんなよ、お前ら」  一斉に視線が向く。  背筋が冷たくなった。  色んな感情を交えた眼。  左後方にいた拓が俺の隣に歩み寄る。  がっと肩を掴むと、大きな声で朗らかに言った。 「キャッスルにいる親友に負けないように頑張らせてもらいますー。先輩方よろしく」  晃の顔があからさまに歪んだ気がした。  初めて拓の顔を見た者も多いはずなのに、全員が会釈した。  仕事仲間だと認めるように。 「元気が取り柄の野郎だ。お前は言いたいことないのか」  篠田がアイコンタクトする。  緊張で喉が痛い。  いうこと。  いうこと……  なんだ。  えっと。  目線を感じて顔を上げると、類沢がまっすぐに俺を見ていた。  いつもと違う。  いや、初めて会ったときと同じかもしれない。  試す眼。  何を言うの、瑞希。  そう投げかけて。  黙ってちゃダメだ。  息を吸う。 「俺は……」  頭が真っ白になる。  何を言おうとしてたんだっけ。  ああ。  考えてなかった。  みんなが見ている。  なら、言わなきゃ。 「俺は類沢さんのところに行きます」  凍った空気の中で、類沢だけが笑った。

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