233 / 341

どんな手でも使いますよ07

 一瞬で形勢が変わった。 「お、落ち着いてください。我々は」 「鵜亥の回し者か? 随分長い間探し回ってたのな、しつこすぎる」  ダメだ、話にならない。  篠田は初めは苦しがっていたが、愛では無理だと察したらしく、ガンと頭突きを食らわせ腕から逃れた。  すぐに反撃しようとした戒を手で制する。 「どうどう、落ち着け。俺はシエラのチーフ、篠田春哉だ。聞いたことはあるだろ。こっちはうちの№4ホストの愛だ」 「ホスト……? 歌舞伎町一のシエラの……」 「そうだ。だからお前が思っているような連中の仲間じゃない。敵の敵は味方と云うだろ。俺達は今鵜亥らと敵対している。お前に協力を頼みたい」 「何故、巧を知っている」  理由次第では今すぐ殺して沈めてやる。  そんな殺気を放ちながら。  ああ、こいつがどんな人生だったか大体わかってしまう。  いつでも切り捨てられる立場にいたんだな。  いつでも誰かに裏切られる立場に。  そうして一人で生きてきたんだろう。  巧という存在を持つまで。  だから命より大事なんだろう。  危険を及ぼす者は排除したいんだろう。 「鵜亥から聞いたんだ。今うちのホストが奴に拉致監禁されてる。多分レイプもだ。それが誰の為かわかるか? わかるよな。お前の大事な巧の身代わりになっている」  脚色したが嘘は吐いていない。  戒が少しだけ警戒を解く。 「一体何の話をしているんだ」 「とにかく巧を連れて鵜亥の元に一緒に行ってくれないか」  だから篠田さん……そんな単刀直入に、と愛が固まる。  案の定、戒は威嚇姿勢にまた戻ってしまった。 「ふざけるな、また巧を奴等の手に渡せっていうのか。この三年間命がけで守ってきた命をホスト一人の為に差し出せと?」 「元は鵜亥のものを力づくで奪い取ってきたんだろ」 「それがどうかしたのか」  怒りに戒のこめかみが痙攣する。  だが、篠田は一切調子を変えずに続けた。 「ただ、顔を見せるだけでいいんだ。そんなお前が傍にいて、また奴らの手に堕ちる訳がないだろう? お前が守るんだろ。だが、瑞希は……あいつは巧がいないと助けられないんだ。ほんの少しでいい。同行してくれ」  頭を下げられ、戒が深呼吸をしながら肩の力を抜く。 「正直、訳がわからないが……巧は協力するっていうだろうから、あいつの元に連れて行く。話はそれからだ」 「いいのか」  

ともだちにシェアしよう!