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どんな手でも使いますよ16

「申し訳ないんねんけど、鵜亥はんへの面会は二時間ほどお待ち頂くで」 「なぜ鵜亥に用があるとわかった?」  篠田の追及に汐野はにやにやと答える。 「あんさん、篠田春哉やろ? シエラのチーフの。自分の店のホスト一人の為に№1まで犠牲にして物好きなやっちゃな」  犠牲?  何を言ってるんだ。 「お前と話に来たんじゃない。さっさと鵜亥と会わせろ」 「確かに巧と鵜亥はんの再会は見たくもあるけどな……ダメや」  そこで限界だというように戒が進み出る。 「まだあんなこと続けてんのか」 「おっほほ。どした、運び屋。妙に威勢がええやん? 鵜亥はんの計らいで生かしてもろとる身の癖して」 「てめえ……」  その怒った肩を篠田が押さえる。  戒は息を荒げながらも引き下がった。 「頼む。瑞希と鵜亥と話がしたい」 「とりあえず、控室に案内するからついて来いや」  そう言ってエレベーターのボタンを押しに向かった汐野の背中を三人で追う。  ポーン、と軽快な音がして鉄の扉が開いた。  乗り込んだ汐野の手招きに、三人がそれぞれ躊躇いを浮かべる。  その反応にニヤリとした汐野が扉を閉じようとする。 「はよせんと、閉まるでー」 「っくそ」  駆け出した戒が手を挟んで扉に縋る。  力任せに開いた扉の隙間で汐野はただ腕を組んで微笑んだ。  遅れて二人も乗り込んだ。  密室に四人が緊張した空気の中佇む。 「よお来たな、巧」 「……もう会うことはないと思ってましたが」  かつての恐れた相手に敬語以外は使えない。  巧の震える肩を戒はずっと抱いていた。  その様子を薄ら笑いを浮かべて汐野は眺める。 「鵜亥はんが見たら発狂もんやで」 「狂わせればいいだろ。そしたらお前のものになるかもしれないぞ」 「……何を言うとんの」  篠田の言葉に初めて汐野が動揺を見せる。 「手に入れたい相手が上司だと大変な気苦労もあるだろう。忠実な部下で一生そばにいる、か。健気なことで」 「たった数分でよおわかった口利くなあ?」 「わかりやすいんだよ」  青筋を浮かせた汐野が言い返そうとした途端、扉が開く。  目的の階に着いたようで、四人はより緊張を深めて降りた。 「あれ、汐野さん戻ってたんすか」  部下の一人らしい男が出迎える。 「ああ。今度はお客さんの迎えに行ってたんや」 「お疲れ様です」  入れ違いに男は下に降りて行った。

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