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夢から覚めました18

 おれが壊した。  鵜亥はんが必死で崩さんようこの五年間積み重ねてきたものを。  壊した。  眼を背けていた人物を目の前に突き出して。  あんなにも、脆かった。  平気で人を殺すあの人が。  あんなにも……  新宿で降り、車を停めておいた駐車場に向かう。 「こんな車買ったのか」 「あんたがな」  扉を開いて、助手席に促すと怪訝そうに言った。 「お前が運転か?」 「せやで」 「……傷つけるなよ」 「わかっとります」  バタン。  二つの扉が同時に閉まる。  ハンドルを握り、口を結ぶ。  だが、耐え切れなかった。 「汐、野?」  驚いたやろね。 「どうした?」  ぼろぼろと涙が頬を伝っていくのを呆然と見つめて。  どうしたんやろね。  きっと、あんたが言うたから。  なんでだ?  おれが答える前に、あんたは死んでしまったから。  ああ。  殺したんや。  今の鵜亥はんを。  過去の鵜亥はんに。  なんで。  なんで、か。  そんなん、おれが知りたかったわ。  楽しんで?  ちゃう。  結果なんて眼に見えてた。  どう転んでもいい方向になんて行くわけないって。  それでも会わせた。  なんで。  簡単なこと。  巧との決着をつけてほしかったから。  ハンドルにもたれて咽ぶ。 「ふ……っく……うう……」  ずっとあんたの心の一番を占めていたあのガキを、どうにかして消したかったから。  会ったら、あんたは清算できると思った。  思ったんよ。  あの時は。  それが、結果これや。  自分勝手にあんたを狂わせてしまった。  ただ、見てほしかったから。  おれを。  まだ幼かった頃、拾われてからずっと忠誠を誓ってきたおれを。  見てほしかった。  いや、それもちゃう。  そんな生温いもんと違う。  あんたを壊したかった。  それや。  壊して、壊して、独り占めしたかった。  瑞希とかいうガキに二度と心が奪われぬよう。  おれが籠に閉じ込めてやりたかった。  そんな黒々とした思いがそうさせたんやろ。 「汐野。ハンドル貸せ」  見かねた鵜亥が汐野の脇にあるレバーを引き、ハンドルを助手席側に異動させた。  ガチャン。  その音に眼を見開いて、身を起こす。  エンジンをかけ、発進した鵜亥がまっすぐに前を見つめている。 「あ……」 「どうした?」 「いや、なんでもないわ」

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