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第11話 AV鑑賞会へのお誘い

『佐々木にファーストキッス奪われちゃった事件』から二か月くらい経った頃だろうか、佐々木から珍しいラインが飛んできた。 〔今週末の金曜から、二泊三日で遊びに来ない?〕 思わず二度見、三度見くらいしてしまった。いやぁ、まさか佐々木から泊まりで遊ぼうぜ、なんて誘われるとは思わなかったな。 そして思い当たる。夜通しゲームのお誘いなのかも知れない。 確かにこの頃佐々木ときたら、ゲームにハマってしまったらしくてどんどんラインナップが増えてるもんな。対戦系のヤツも買ったばっかだし、ハマりたての時期って寝る間も惜しんでやっちゃうよなぁ。自分にも覚えがあるムーヴに、アイツもそうかとニヤつく。 でもなぁ。 俺はひとり、うーむと腕組みで唸った。 どっちかっていうと俺の心情の方が問題だ。 二か月前、略して『ファーストキッス事件』の勃発により、しばらくは佐々木に対しめちゃくちゃぎこちなくなってしまった俺も、二か月もたった今ではちゃんと普通に接する事ができるレベルにまで回復している。 だがしかし、表面上分からない程度になっているというだけであって、その実ちょいちょい佐々木に対してトキメいている自分に気づいて愕然とする事もままある。……結構ある。 そんな俺が二泊三日も一緒にいたら、トキメいちゃうこと請け合いじゃない? お泊まりってドキドキの宝庫じゃん。風呂上がりの佐々木がさらにイケメン度上がったらどうしてくれるんだ。 柔らかそうで可愛らしい女の子と、むちむちのおっぱいが大好きなごく一般的な男子として、これ以上佐々木にトキメいてしまうのは避けたいところだ。 でもなー、佐々木とお泊まりは、ちょっとしてみたい。 いやいや二泊三日は流石に長い。つーかヤバい。 心の葛藤を抱えた俺は、取り敢えず佐々木にラインした。 〔いいけど、いきなり二泊三日は長くない? 急にどうした?〕 〔親が結婚二十年の記念にって旅行に行くんだ〕 〔置いてけぼりw〕 いつも通り! を心がける俺のラインはまぁまぁふざけている。 〔せっかくだから遊び倒したいし、ゲーム&AV鑑賞会を決行したい〕 マジで!!!!? やっぱりゲーム、は置いといて佐々木チョイスのAVなんて興味しかない。めっちゃ見たい。 〔心の友よ〕 簡潔に返事をして、オレは心の中でガッツポーズした。 AVでドキドキするなら問題ナシだ。 しかもこのところAV鑑賞会があるって日に限って佐々木がどうしても話を聞いてほしいって言ってくるもんだから、ちょっとエロに飢えてたんだよな。なんだよ佐々木もちゃんとエロいことに興味があるんじゃねぇか。 ああもう、ワクワクが止まらない。 速攻で母ちゃんに相談したら、即OK貰えた。ウチでの佐々木の信頼度は俺より遥かに高いんだ。切ない。 そうして待ちに待った金曜日、一旦家に帰ったオレは勉強道具と着替え他お泊まり用のアレコレ一式を持っていそいそと家を出た。てくてく10分ほど歩いて、この辺りでは一番でっかくてカッコいいタワマン11階の佐々木ん家に到着する。 「おっじゃましまーす!!」 「いらっしゃい。待ってたよ」 元気よく佐々木ん家の玄関を開けると、佐々木が最高の笑顔で待っててくれた。持ってきた荷物をさりげなく持ってくれるとか佐々木って行動もイケメンなんだよなぁ。モテるのも分かるわ。 佐々木の部屋に入ったら既にエアコンがんがん、お菓子もスタンバイしている。 「お待たせ。コーラでいいよね」 そしてすぐにキンキンに冷えたコーラも出してくれる。いつもながらホテル並のすごいサービスだ。ウェルカムクーラー、ウェルカムドリンク、ウェルカムお菓子、最高。 お菓子くってコーラ飲んでひと息ついたら、佐々木がテーブルを拭いて勉強道具を取り出した。 「え、マジで!? 今日も勉強すんの!?」 念のため&親への『もちろん勉強もしますよ』アピールのために、勉強道具を持っては来たけどもちろんやる気はなかった。 「宿題だけやっとけばあと二日遊び放題だからね。やっといた方が良くない?」 「お前のそういうとこホント尊敬するわ。佐々木ん家に来るようになってからオレも真面目にやるようになったけどさ、前だったら日曜の深夜にやってたもんな」 もしくは翌朝、学校で他のヤツに写させてもらうかだ。 「オレもう今日は佐々木チョイスAV見ることしか頭になかった」 「ははは、正直だなぁ。でも夜にゆっくり見たいけどな。その方が雰囲気でるし、集中できるんじゃないか?」 俺はもう佐々木チョイスAVが気になって仕方なかったけど、佐々木の意向を汲んで夜まで待つ事にした。オレは真っ昼間でも全くもって気にしないけど、佐々木は慣れてないっぽいし。俺も男だ。集中したいってのもよく分かる。 結局いつもみたいに二人で勉強してゲームして、佐々木の母ちゃんが作っといてくれた晩飯を二人であっためて仲良く食う。俺ん家は大皿にどんと盛られた料理をみんなでつつくスタイルだけど、佐々木ん家は一人分がワンプレートに綺麗に盛られていてどこかオシャレだ。

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