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第14話 【佐々木視点】目が逸らせない
宮下がもの凄く真剣にAVを見ている。
厳選したAVはどうやらお気に召したようで良かったけれど、俺は、むしろ宮下から目を逸らせなかった。
宮下は俺を気遣ってこっちを見ないようにしてくれていたらしいけれど、もはや俺は宮下にしか目が行かない。なんとか顔の向きだけはテレビの方に向けているけれど、その実ちょっと体を後ろに倒して宮下を視界に入れやすくしている。
デカいクッションみたいな形状のソファに二人並んで座っていて、宮下は若干身を乗り出して画面を見ているから、横顔なら見放題だ。興奮気味の顔、やっぱりいいなぁ。ゲームの時も思ってたけど、頬とか耳たぶとかほんのり赤くて可愛い。
画面の中ではバスルームで女性が男の体をいやらしい手つきで洗い上げている。童貞と思われる大学生の男をその体で籠絡していくという話の冒頭で、すでに宮下の腰はもじもじと動き始めていた。
唾を飲んだのか、宮下の喉がコクっと動いて、なんとも艶かしい。
さりげなく足を動かして宮下の太ももに触れたら、ピクンと反応してくれて嬉しかった。できることなら太ももの外側じゃなくて、内側の柔らかいであろう皮膚をまさぐってみたい。
チラッと画面を見てみたら、バスチェアに座った男を女性が撫で回し、後ろから射精管理した状態で手淫を始めたところだった。俺的にここは、ぜひとも宮下を高めて欲しいオススメのポイントだ。
「うっわ、エロ……」
案の定、宮下の唇からそんな声が漏れる。宮下の声の方が余程エロい。
股間も緩く勃ちあがって来たようで、俺は想定通りの展開に期待で心臓がバクバクと高鳴るのを感じていた。
「チェリーにあの攻撃はオーバーキルだよな」
急に宮下がこっちを見る。もちろんバチッと目があった。
「バカ、こっち見んなって!」
真っ赤になって俺の顔を画面の方に向けようと頬を押してくる仕草が可愛い。けれど、俺はこのまま宮下とただAVを見続けていくつもりはなかった。
今日は、このAVの女性じゃないが、体から宮下を籠絡する決意でこの場に臨んでいる。
近頃の俺に対する過剰な反応から、宮下が俺を意識しているのは充分に感じ取れていた。一瞬だけ告白して恋人同士になれないものかと思ったけれど、宮下はこう見えてやっぱりかなりの常識人だ。
この二ヶ月、普段からさりげないボディタッチを繰り返して慎重に様子を見てきたが、俺とちょっとした事で肌が触れ合ったり顔が近づいたりする度に、真っ赤になってあわあわと反応している癖に、なんでもないフリをしようとして適当な事を言ってごまかそうとしてくる。
もの凄く可愛いが、それだけ常識の壁が厚いようにも感じていた。
普通に告白したら、男同士で変じゃないか、とか悩んでこの家に来る事さえ迷うようになってしまうだろう。逃げられないように、告白と同時に有無を言わさず囲い込む必要がある。
俺は考えたあげく、宮下の弱点を徹底的に利用する事にした。
宮下は男子高校生らしく、気持ちいい事が大好きで、興味もMAXだ。しかも俺から触られることへの恥ずかしさはあっても嫌悪感はないことが分かっている。これを利用しない手はない。
AVにかこつけて宮下を気持ちよくさせて、俺から離れられないようにしてしまいたい。俺だって童貞だから上手くいくかは分からないけど、二人で研究していこうと思ってくれれば大成功だ。
恥ずかしがって俺の顔をグイグイ押してくる手をそっと握って引き寄せ、宮下に逃げられない程度に僅かに顔を寄せた。俺はこの二ヶ月で、近すぎて距離を取られたりしない、けれどそれなりに恥ずかしくて宮下が思わず固まってしまうという絶妙な距離感を把握している。
その絶妙な距離感を保ちながら、俺は囁くように言った。
「ごめん、だってあんまり真剣に見てるから。もしかして勃った?」
真っ直ぐに目を見つめて、宮下が恥じらうような直接的な質問をぶつけてみる。案の定宮下は首まで赤くなって、股間がさらに膨れてきた。俺の言葉に反応したのかと思うと胸が熱くなる。
「あ……大きく、なった……?」
「勃つだろこんなん。見るならこのお姉さんのテク見てろよ。すげーぞ、あの手の動き」
思わず見たままを口に出したら、宮下がちょっと涙目で唇を尖らせる。ぷっくりした唇が突き出されて、もう誘ってるようにしか見えない。
ああ、その唇にキスしてしまいたい。
「ああいうの、好き?」
「悪いかよ、お前も好きだろ! お前が借りてきたんだから」
真っ赤になって怒ってるのが可愛い。
相手にリードされて高められていくのも嫌いじゃないとわかっただけで、このAVを選んだ甲斐があったと思う。ここからは、宮下がどうされたいのかを探っていくことの方が重要だ。
宮下が下手に動けないように顔を近づけたまま、俺は会話を続ける。
「確かにあんな風に擦られたらたまんないだろうね」
「だよな! 手コキでも出ちゃうの分かるわ」
「宮下はどういうのがいいの? 俺は全体的に締め付けられるのとか結構好きだけど、宮下は?」
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