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04 ダンスに魅せられた男達

市長ニュース 「男子ペアダンスコンテンスト開催!」 インタビュー 「市長の呼びかけで始まったこのイベント。高等教育でのダンス教科設立に伴い、男子生徒の参加率を少しでも上げたいとの狙いで始まりましたが……」 「ええ。男の子は基本ダンスにはあまり興味ないんですよ。自分にも経験があります。でも、このイベントを通じ、ダンスの魅力を広められたらと思います」 「そうですね。市長は、以前はダンスコンテストに出場される程、お上手だったとお聞きしましたが」 「ははは、少しだけですよ。下手な横好きでして」 「ははは、そうなんですね。では、イベント開催を楽しみに待ちたいと思います」 **** とある市内の高校。 体育館のステージ上では、文化祭の演目の一つであるダンス部の演技が披露されていた。 美しい細身の男が、伸び伸びとステージの上を飛び跳ねる。 ふわっとした髪が揺れて、少年のような澄んだ目がキラキラと輝く。 その男子生徒が踊る演目は、花の精に生まれ変わった少年が、美形の庭師に恋をする物語。 陸斗は片時も目を逸らす事が出来なかった。 最初はバレエかと思った。でも何か違う。 ミュージカルのようでお芝居のような。 物語をつづり、客達を不思議な世界に誘う。 (これが、ダンスなのか……カッコいい。思わず、見惚れちまった) ハッとした。 (アレ? 俺 何で勃起してんだよ……まぁ確かにこんなに興奮したの久しぶりだったな。俺もダンスしてみてぇ) 陸斗は早速、ダンス部の門を叩いた。 出迎えた男子生徒に握手を求めた。 「はぁ? お前がダンスを?」 「ああ、お前のダンス見たら、俺もお前のようになりたいって思ってな。お前、2年の八坂 美樹(やさか みき)ってんだろ? 俺は同じ2年の桐生 陸斗(きりゅう りくと)ってんだ。よろしく」 「陸斗か……で、お前はダンスが好きなのか?」 「実はそうでも無かったんだが……お前のダンスを見て好きになった」 「ふん、俺はダンスなんて嫌いだ」 「え!? どうしてだよ。あんなに踊れているのに」 「辛いだけだからな。ああ、そうだ。お前みたいに、にわかで始めてみたいってやつが殺到している。なぁ、陸斗。お前はいつまで続くかな。ふふふ。精々頑張れよ」 美樹がダンスを嫌っている理由は後で聞かされた。 子供の時からバレエ、器械体操、トランポリンなど、友達と遊ぶ時間が持てないほどやらされていたらしい。 (それで嫌いになったか……でも、そのおかげでアレほどまでにカッコいいダンスが出来るんだ。羨ましいぜ) **** 「陸斗は基礎からだな」 「はい! 由季(ゆうき)先生!」 顧問の六波羅 由季(ろくはら ゆうき)は、有名なダンサーだったらしいが詳細はわからない。 長身。そして、綺麗な体のラインに小顔の美形。 (美樹といい、由季先生といい……何でダンサーってのはスタイル良くて、こんなに美形なんだ? それに比べて俺なんか……) 陸斗はどちらかというと体操の選手のような筋肉質の体型で、顔はシュッとした精悍なハンサム顔ではあるが美形という形容詞は当てはまらない。 陸斗が入部して最初に気づいたのは圧倒的に基礎が足りていないという悲しい現実だった。 柔軟に筋トレの繰り返し。 陸斗が中学から続けて来た球技で使う筋肉とは全く別種のもの。 (なるほどな。いつまで続くか、か。確かにつれぇな、これは。でも俺は諦める気は全くねぇぜ!) 陸斗は一人残って基礎トレーニングをやり続けた。 ある日の事。 一人朝練をしていた陸斗の元に美樹が現れ、声をかけて来た。 「こんなに朝早く……お前、一生懸命なんだな。みんな辞めてったのに」 「言っただろ? 俺はマジだって」 「ふーん」 その日から朝練に美樹も加わる事になった。 **** 由季が手をパチっと叩いた。 「はい、そこまで! 休憩の後は、曲に合わせて通しでやる!」 「はい!」 美樹は、陸斗の横にスッと座った。 「陸斗、あそこのステップはな、ワンテンポ早く動くつもりでやんだよ。頭の中で先のイメージを作れ」 「え? ああ、なるほどな。アドバイスありがとう!」 「べ、別に……礼を言われる程の事はねぇよ……ただ、お前があまりにもみんなの足を引っ張るからよ……見てられなくて」 「確かに、それは悪かったな。でも頑張るぜ、俺は!」 「……ああ、精々頑張れよ」 美樹は頬をほんのり赤くして顔を背けた。 そんな美樹をじっと見つめる。 (何だ、美樹のやつ、意外といい奴じゃないか。冷たいやつだって思ったけどな……) 「てめぇ、いつまで俺の顔見てんだよ!!」 「あっと、ごめんごめん。ははは」 (ふふふ、可愛いな美樹。ほっぺ膨らませて……自覚ないなありゃ) 陸斗は自分の股間が窮屈になっていたのに気がついた。 (やばっ、またフル勃起してる……何度目だよ、くそっ) ポリポリ、と頬をかく。 (まぁ、いいけどよ……) 陸斗は、ツンとして目を合わせまいとする美樹の横顔をいつまでも見つめていた。 **** それから、美樹はしばしば陸斗にアドバイスをくれるようになった。 次第に打ち解け合っていく二人。 美樹は、声を上げて笑った。 「ははは、お前マジか?」 (笑うとなんて可愛いんだ、こいつは) 無邪気な少年の顔。 くったくがなく、人懐こい。 陸斗は、何故か初恋の女と話しているようなドキドキ感を肌で感じていた。 「陸斗、お前さ、体育以外、赤点ギリギリって……どこまで脳筋なんだよ!」 「うるせえ! お前だってそうだろ?」 「バーカ! 俺は数学以外は平均そこそこだってんっの!」 「はぁ、平均だ? ふん、そんなの自慢になるかよ! 俺だってその気になればそのくらい取れるぜ」 「へぇ……じゃあ、次の期末テストでは勝負な」 「ああ、いいぜ! 望む所だ!」 「何か賭けようぜ! 何にしようかな。あははは」 自宅のベッドで寝転ぶ陸斗。 「ふふふ、今日も美樹の奴……いい笑顔してな……」 勃起したモノをしごきながら美樹の顔を思い浮かべる。 照れた顔で、恨めしそうに睨む顔。 かと思えば、ぱぁっと満面の笑みを陸斗に向ける。 「陸斗!」 「……はぁ、はぁ……美樹、可愛いよ……いくっ……」 そのまま、美樹と一つになるを妄想をして射精した。 今にして思えば、一目惚れだった。それを陸斗は自覚した。 そして、愛に目覚めたらもう止まらない。 一方で 美樹は由季が好きのは気がついていた。 部活の練習時間。 美樹に、由季の檄が飛ぶ。 「いい加減真面目にやれ! 最近浮かれすぎだぞ美樹!」 「はぁ!? 何で俺が浮かれなきゃいけないんだよ!」 口ごたえをしつつも素直に従う美樹。 「ほら、これでいいだろう?」 「そうだ。やれば出来るんだから、ちゃんとやれ!」 「はいはい、分かりましたよ!」 馴れ馴れしい態度とためグチ口調。 他の人は由季の事は「先生」と呼ぶが美樹だけは名前を呼び捨て。 そしてそれを、由季も当たり前のように許している。 恋人同士の距離。誰が見ても分かる。 (美樹が由季先生を好きなのは事実だ。別にそれでもいい……片想いだって、実らぬ恋だって、俺はあいつと一緒にいられるだけで幸せなんだ……) **** 部活のブリーフィングで由季が言った。 「今度の市長主催の男子ペアダンスコンテストだが……美樹、陸斗 とペアを組んでステージに立て」 「ああ、分かったよ」 美樹は、頭の後ろで手を組んで何でもない事のように答えた。 陸斗は、びっくりして椅子から転げ落ちそうになった。 「俺ってマジですか!? 由季先生」 「美樹は陸斗の事をしっかりサポートするように」 「ああ、任せろ……」 「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺なんか無理です! 初心者ですよ!」 「陸斗、お前は確かに初心者だ。しかしちゃんと練習してるし、あと少し頑張れば、いい線行くと私は思ってる」 「しかし……」 「これはお前の為であるが、ダンスに携わる関係者全員の為でもあるんだ。ダンスは一部の人の為の特別なものじゃない。それを初心者である陸斗、お前が証明するんだ。誰でもやる気があれば出来るものだって事を!」 「は、はい……」 陸斗は、引き受けるよりしょうがなかった。 **** 演目は、男同士の禁断の愛。 舞台は、中世ヨーロッパのとある田舎。 ライバル同士の領主の家に生まれた二人は、時には領地を守る為に剣を交え、時には侵略者に対し共に肩を並べ戦う。 やがて、成長するに従い、互いに認め合う仲になっていく。 妻を娶る年頃になり、ある事に気づいてしまう。 互いに愛してる事に……。 二人は、小鳥さえずる美しい泉で密かな逢引きを重ねる。 身も心も結ばれ、愛を育み、二度と離れないと誓う。 が、しかし……物語の結末には辛い現実が待っている。 家の者に見つかった二人は、引き離されてそれぞれ幽閉されてしまう。 絶望のうちに衰弱死する二人。 しかし、いつしか二人で願った小鳥の姿となって甦り、あの美しい泉で番となって幸せに暮らすのだった。 そんな悲恋の物語。 陸斗と美樹向けに特別メニューが始まった。 それは、陸斗にとって今以上に過酷なものであった。 最初こそ気合と根性で何とか乗り切っていた陸斗だったが、中盤ではそれなりのテクニックが要求され、陸斗の実力不足はいかんともしがたい状況に陥った。 陸斗は、絶望を覚えた。 「くそ! ただでさえ激しい動きなのに、しなやかさ、美しさを表現するのなんて……出来かっよ、こんなの」 「……惜しいぞ、もう一度だ!」 陸斗の肩にプレッシャーがのしかかる。 先生の思い、応援してくれる部員達、そして何より自分を信じてくれる美樹の思い。 (上手くやらなきゃ……俺は期待を裏切る訳にはいかねぇんだ……でも、俺では) 何度も何度も同じフェーズを繰り返す。 「やっぱ、ダメだ……俺じゃ無理だ」 「大丈夫、もう一度。おしい所まで行ってんだよ」 「美樹、もういいよ……何度やっても出来るイメージが沸かねぇ……」 「だから、もう一度。繰り返せば絶対に出来る。弱気になるなって!」 「弱気になるなだと!?……お前に俺の気持ちが分かるかよ! やってもやっても上手くいかねぇ、俺の気持ちを」 「陸斗……」 「俺、ダンスなんかやるんじゃ無かった……俺なんかが」 パチン! 陸斗の頬に平手が飛んだ。 「な……何を」 「しっかりしろ!」 美樹は、目を潤ませ、悔しそうな顔で怒鳴る。 「お前は、俺にダンスの楽しさを、本当は楽しいって事を教えてくれたんだ!!! だから、ダンスをやんなきゃ良かったなんて言うなよ!!」 「美樹……」 「お前は、俺のかけがえのないパートナーだ。だから俺が出来ることは何でもやってやる。だから、そんな寂しい事言うなよ……」 美樹の目から大粒の涙がなみなみと溢れ、頬に伝わった。 「泣くなよ……美樹」 「泣いてなんかねぇよ!」 「悪かった美樹……ありがとな」 「……べ、別に……いいって事よ。分かってくれればよ!」 美樹は涙と鼻水で、顔がめちゃくちゃになっていた。 陸斗は、思わず美樹の頭を撫でた。 「……ありがとうな、美樹」 **** 二人のダンスを通しで見た由季は、うんうんと頷いた。 「だいぶ良くなった。頑張ったな陸斗!」 「はい!」 美樹がチラ見して、ニコっと笑った。 二人拳の先をチョンと合わせた。 由季は続ける。 「あとは、愛の誓いのシーンだな……一番の見せ場なのだが……陸斗、お前はエモさがまだまだ足りない。美樹を抱きしめるのに何かわだかまりでもあるのか?」 「い、いいえ……そんな事は」 喉まで出かかったモノを抑え、陸斗はそう答えた。 (だって、美樹は由季先生の事が好きだから……) 陸斗は、自分の胸をギュッと抑えた。 この事を考えると、胸が張り裂けそうになくらい痛むようになっていた。 **** 二人の自主練は夜遅くまで続いた。 休憩をとった二人は、ペットボトルの水をのむ。 美樹は、陸斗にタオルを放り投げた。 「お前さ、何意識してんだ?」 「別にそんなんじゃねぇよ……」 タオルを受け取り首に巻きつつ答えた。 陸斗はそのまま座り込む。 「ふーん」 美樹も陸斗の横に座った。 二人、誰もいない練習場をぼうっと見つめる。 「男同士だと嫌だとか?」 「そんな事ねぇよ」 「じゃあ、俺だから嫌なのか?」 「お前、ふざけんなよ! 俺がそんな風に考えるわけねぇだろ!?」 「……そっか」 美樹は、すくっと立ち上がった。 「さぁ、もう一度だ」 **** 問題のシーン。 二人、目を合わせて見つめ合う所から始まる。 少しずつ体を寄せ合っていき、首と腰に腕を回して固く抱き合う。 体を密着させたまま、もつれるように倒れ込み、唇を合わせながら濡れ場へと続いていく。 それが、何度やっても上手くいかない。 固く抱き合う所で、心のストッパーが作動してしまうのだ。 「陸斗、お前、どんどん悪くなる。体が震えているじゃないか……カチコチだぞ」 「ごめん、やっぱ俺には……」 美樹は、大きなため息をついた。 そして、手を腰に当てて言った。 「なぁ、陸斗、俺を抱けよ」 「え!?」 「こうなったら、俺たちが物語の主人公になりきるしかねぇ。物語通り、美しい泉で結ばれる、ってやつな!」 「お前、何を言ってるのか、分かっているのか? 結ばれるっていうのは男同士のセックスの事だ。男のモノを受け入れるって事だぞ!?」 「分かっているさ!! でも、俺はお前に誓った。何でも教えてやるって。出来る事は何でもするって。だから」 「その気持ちは嬉しいよ。でもそこまでしてもらう訳にはいかない。これは俺の問題だ」 「俺達のだろ? お前とするだけで、お前のわだかまりが消えて無くなるのなら、俺に取ってそんなの何でもねぇよ!」 「しかし……」 「しのごの言ってんなよ! 男らしくねぇぞ! ほら、服脱げよ!」 **** 裸体の男が二人。 陸斗は、仰向けに寝転んだ美樹の両足首を持ち、グイッと持ち上げた。 目の前には申し訳ない程度に勃起したペニス。 そして、その下の尻の割れ目にはキュッと閉じられた男の秘部。 「綺麗だよ、美樹」 「変んな言い方やめろ! それにジロジロみんなって! ほら、早く入れろ!」 陸斗は、イキリたった自分のモノを握りしめ、美樹のアナルにそっとあてがった。 体重のせ、男のそれは少しづつ男の体内に入っていく。 ミシミシと広がる。 しかし、それは途中で止まった。 「痛いか? 力抜けよ」 「わ、分かってるって……」 手にはタオルがぎゅっと握られている。 (こいつも葛藤してる。そうだよな、俺は由季先生じゃないんだ。好きでもねぇ男のを受け入れる。気持ちいいものじゃない。体が拒否反応を起こしてる。そうなんだろ?) 陸斗は、接合部にかける圧を緩めて言った。 「なぁ、やっぱりやめないか? 俺、お前の気持ちだけで嬉しかったから」 「アホ! 何だよ、それ!」 「え?」 「俺の覚悟が足りねぇって言いたいのか!? 俺はそんな半端な気持ちで言ったんじゃねぇよ! ちょ、ちょっとな……緊張してるっていうか……本当にアレが入ってくるってのが、怖いっていうか、恥ずかしいっていうか」 真っ赤な顔で陸斗を睨みつける。 ぷっ。 陸斗は思わず笑った。 「何を笑ってる!!」 「ごめん。たださ、お前って可愛いなって」 「てめぇ! 俺をバカにすんのか!」 「いやいや、誤解だって! それよか、お前、初めてなのか、アナルセックス?」 「な、そうだよ……悪いか」 「悪くねぇよ。ただ……」 「ただ?」 「何でもない」 (お前は由季先生とじゃなく、俺にアナルバージンを捧げてくれるんだ。すげぇ、嬉しいよ。俺は、お前の優しさに応えるぜ。いくぜ!) 再び陸斗はガチガチになった肉棒を美樹の肉壺に突き刺していく。 「はうぅ!!」 美樹は、嫌々と首をブンブンと振った。 陸斗は構わずに腰にグッと力を押し込める。 するとどうだろう。 一旦入り始めたそれは、刀が鞘に収まるようにスッと最後まで挿入された。 美樹は、食いしばっていた歯を緩め、薄目を開けた。 少し嬉しそうな表情。 「はぁ、はぁ、入ったな」 「ああ。全部入ったぜ」 「ふふふ、お前のってすごく固くて熱いのな」 「お前の中だって、あったかくてぬるぬるして気持ちいい」 「さぁ、動けよ! 俺の体で思う存分気持ちよくなって、そのわだかまりを吹き飛ばせよ!」 「ああ、いくぜ!」 **** 陸斗の腰の振りは野獣のそれであった。 激しい出し入れを高速ピストンでぶちかます。 陸斗は童貞であった為、加減というものを知らない。 こころ行くまで、己の男根で美樹のオス膣を蹂躙していく。 (気持ちいい、吐き出したい、今すぐにでもお前の中に……でも、お前はどうなんだ? 気持ちいいのか?) しかし、その目に映るのは、うぐうぐ、と苦しそうに唸る美樹の姿。 タオルの端を噛み締め、必死に悲鳴を出すのを我慢してる。 (痛いのか……やはりそうだよな……ケツ穴にフル勃起ペニスが入っているんだ。そうなるよな……) その時、スルッとタオルが落ちた。 「うっ、うっ……だ、だめ……」 艶っぽい声が漏れた。 「え!?」 よく見れば、とろとろ顔で目をうるうると潤ませているではないか。 (まさか、感じているのか?) 試しに突き上げを激しくしてみる。 すると、男を誘うエロい喘ぎ声が漏れ出す。 (無意識とはいえ……感じてるのは間違いない。由季先生に抱かれてる。そう想像してるのだろうな……) 陸斗は、自分でそう想像して胸にチクリと針が刺さった。 (ごめん、俺で。でも俺、お前の感じてる顔見れてとっても幸せだ。だから、俺の精一杯でお前を気持ちよくさせるよ) **** 陸斗の腰の振りは、休む事なく続く。 「うぐ、うぐ……」 いきそうなのを必死に耐える美樹。 悔しそうで今にも泣き出しそうな顔。 でもその中には、気恥ずかしさ、嬉しさが見え隠れしている。 そんな表情が何より愛おしい。 (お前ってこんな顔もするんだな。きっと由季先生の前でだけ見せる顔。しかし、俺は性欲がくすぐられ お前への思いがどんどん膨らむ。いけないって分かっているのに……) 陸斗とて限界はとうに突破していた。 それを抑えているのは、美樹に対する思い。 背一杯気持ちよくさせる。 そんな愛の誓いに他ならない。 ふとピストンが緩んだ時、美樹と目があった。 「陸斗! 俺の顔、そんなにじっと見るなよ!!」 「ご、ごめん。でも……」 イキの気持ちよさに健気にも耐え、それでも怒り顔を作って頬を膨らませる。 今そんな顔をされたらもう止まらない。 (由季先生の手からお前を奪い取って独占したい。俺だけのものにしたい! ヤバい、興奮が収んねぇ!! 絶対に俺の手でイカしてやる。ごめん、ごめんな) 支離滅裂。 いろんな感情が混ざり合い爆発していく。 ピストン運動に、回転方向の力が加わり、極太ペニスはドリルのように雄膣の奥の奥まで捩じ込まれていく。 「あぐっ……うううぁ……かはっ」 キューっと肛門が閉まり、陸斗の侵入を止めようとする。 しかし、陸斗は構わず強引に腰を突き出す。 奥に出したい、自分の思いが伝わるところまで。 ただそれだけを思って……。 「こ、壊れちゃうよ、俺。あ、あっ、そ、そこ。奥に当たってる! やばい! 熱いのが込み上げてくる! いくっ、いくっ!!!」 美樹は、ドクンと大きな痙攣を伴い絶頂を迎えた。 (よかった……これで安心して俺もいける。うっ、で、でるっ) 射精の快楽が脳髄を駆け上がる。 たっぷりの男の濃厚ミルクが美樹の腹の中に放たれた感覚。 (俺の思いを……少しでも感じてくれ) **** 二人は裸のまま、床に寝転んだ。 天井を見つめる。 美樹は、ぽつりつぶやいた。 「なんか……恥ずかしいな。俺、お前にケツ掘られて、それでいかされちゃったんだよな?」 「ああ」 「やばい。俺、まともにお前の顔見れねぇよ」 「何でだよ」 「は、恥ずかしいからに決まってんだろ!!」 陸斗はしみじみ言った。 「なぁ、美樹。ありがとうな」 「ん? なんだよ、改まって」 「この事は、俺は一生の宝物にするよ」 「大袈裟だな」 「でも、お前は忘れろよ。いいな!」 「なんだよ、それ。俺だって……」 「いうな!! お前が由季先生の事好きだって知ってんだよ!! だからこれは一回きりの過ち。忘れるんだ。そうとでもしてくれないと俺がたまんねぇんだよ! だから……」 美樹は、当初陸斗の言葉に驚きを持って聞いていた。 が、話が進むにつれ呆れ顔に変わった。 「……ったく。お前さ、意外とアホだよな」 「何だよアホって?」 「俺が由季を好きなわけあるかよ」 「どういう事だ?」 「見てわかんないのかよ。由季は俺の兄だ」 「え!? 兄? ちょ、ちょっと待てよ。何だよそれ、苗字違うじゃねぇか!」 陸斗は慌てふためく。 美樹は、ニタっと笑って言った。 「腹違いだからな。でも、俺と由季って似てるだろ?」 「た、確かに。でも……」 「それに、俺はお前は知っていると思ってたぜ。俺が小さい頃からダンスしてたの知ってるだろ?」 「ああ」 「由季に教わってた。だから、俺は由季のいうステップなら大抵踊れるんだよ」 陸斗は、思わず叫んだ。 「何だよ、それ! ずるいぞ! アホ! アホ! アホ!」 「あははは、おもしれぇ!」 美樹は、腹を抱えて笑う。 冷静さを取り戻した陸斗は、両手で顔を隠して言った。 「恥ずい。俺、めちゃめちゃカッコ悪いな……」 「そんな事ねぇよ。俺、何だか嬉しかった。大事に思われてるって」 「まぁ、でもお前に嫌な思いをさせちまったって事には変わりねぇ。男に抱かれるっつう屈辱を味わせちまったんだから」 「は? お前、何言ってんの?」 「だから、お前に悪い事したって言ってんだよ」 「悪い事なんてしてねぇよ。あーあ、お前は飛んだ間抜けだな。んなの分かるだろ?」 「何がだよ!」 「お前ってとことん鈍いのな……普通、好きじゃない相手とセックスするわけねぇだろ、って事」 「そ、それって……まさか」 美樹は、ぽっと顔を赤らめた。 そして、恥ずかしそうに陸斗から目を逸らした。 「……ま、まさか、お前って俺の事、好きなのか?」 コクリと頷き、上目遣いに陸斗の顔を覗き込む。 「う、うそだろ!? まさか、そんなはずは……」 「べ、別にいいだろ……お前の事、好きでも……」 「……いや、こんな事、ある訳ねぇよ。これは夢だ」 美樹のイライラが爆発した。 「てめぇ、いい加減にしろ!!! 俺はお前が好きなんだ! 何度も言わせんなよ!!」 突然、陸斗は美樹に抱きついた。 美樹は、驚いてあたふたした。 「おいおい、俺は確かにお前を好きだって言ったが……突然こうゆう事をしてくるのはだなぁ……あれ? 陸斗、お前、泣いているのか?」 「ああ、俺は泣いている」 陸斗は、泣きながらニコっと微笑む。 その笑顔に、美樹の胸は突き貫かれた。 「……だってよ、俺はお前の事、ずっと好きでいて、いいって事じゃないか。俺、嬉しくてさ……」 美樹は優しく微笑みを返す。 「ああ、そうだ。ずっと俺を好きでいいんだ。嬉しいか?」 「ああ、とっても!」 二人は愛を確かめるように、キスをした。 **** コンテスト当日。 満員のホール。 そのステージの上では、陸斗と美樹が愛のダンスを舞う。 「すげぇ気持ちいいな。まるで今お前とセックスしてるようだ。お前と繋がってる感じ。そして、熱いものを持て余して爆発しそうな感じ」 「俺も同じ事を思ってる。お前の固くてぶっといのが体に入ってきて、下腹部を熱くジンジンさせてくる。すごく気持ちよくて、このまま達してしまいそう」 「なぁ、美樹」 「ん?」 「もっともっと、気持ちよくさせてやるからな」 「ああ、陸斗。ありがとう。でもいつもみたいに暴走してお前だけイクなよ!」 「てめぇ!!」 「ふふふ」 客からは見えない角度。 陸斗は、口付けで美樹の口を塞いだ。 「黙れよ! 美樹!」 「……ったく強引なやつだな。お前は」 そう言った美樹だったが、内心嬉しくて溜まらずに頬を緩ませていた。 **** その頃、ホールは異様な雰囲気に包まれていた。 二人のダンスに見惚れる観客達。 とある男性同士の観客があった。 「いいなぁ、このペア」 「ああ、なんか引き込まれるっていうか……甘くて切なくて」 「恥ずいんだが、俺のここ見てくれ。めちゃ勃起してる」 「なんだ、お前もか。実は俺もだ」 互いの股間の膨らみを見て、微笑み合う。 「俺、なんか男に抱かれてもいいって思っちまった」 「マジかよ……でも、俺も何だか男を抱くのもありなんじゃないかって思えてきて……」 二人、すっと手を重ねる。 そして、そのままギュッと固く繋いだ。 「なぁ、俺たちも……」 「ああ……」 二人は、引き寄せられるようにキスをした。 **** その頃、関係者席にいた由季は、会場を見回して呟いた。 「ふっ……どうやら気付いたようだな……このダンスの魅力に」 由季は、会場に漂う妖艶な雰囲気を敏感に感じ取っていた。 「ダンスとはそもそも、観客達を己の世界に引き込む魔法のようなもの。二人のダンスは、心の内にメスを持った男達を開花させ、その花に魅入られた男達を唯のオスにし、禁断の愛の宴へと導く。つまり、うちなる欲望を解放させる。これこそが、真のダンスの魅力なのだ」 そう言った由季は、一人カーテンの影に隠れ、ズボンとパンツを脱いだ。 そして、なれた手つきで、自分のアナルを指でいやらしくなぞる。 「ふふふ、私だって思い出してしまうよ。愛しい和真(かずま)の事を……」 現市長である神治 和真(かみち かずま)の指となった由季の指は、自分のケツ穴をこれでもか、と掻き回す。 「……ああ、和真……もっと乱暴に俺を犯してくれ。俺の事をめちゃくちゃに……そう、そうだ……。いくっ、いくっ……俺、いきそう、うっ」 由季もまた、和真というオスによってメスを開花させた男の一人だった。 **** 幕が引かれ、会場は拍手喝さいに包まれた。 「はぁ、はぁ、やったな俺達」 「ああ、最高の気分だ」 舞台袖では、由季が出迎えた。 パチパチ。 「すごく良かったよ二人とも」 「ありがとうございます、由季先生」 「見てみろ、この大歓声を。これなら優勝もあるかもな」 「俺達、別に優勝しなくても満足です。な!」 「ああ、そうだな」 二人の手は恋人結びで握られている。 由季は、めざとくそれに気づいた。 「ほう、さてはお前達、何かあったな?」 「えっ!? べ、別に、何も!」 美樹は、誤魔化すように、ヒューヒューと空口笛を吹いた。 しかし、陸斗は真っ直ぐに由季に向かって言った。 「由季先生! 実は、俺達、愛し合っているんです」 「お前、今それ言うのかよ!!」 「いいじゃないか? 本当の事なんだから」 美樹をなだめる陸斗。 由季は、二人の様子から全てを感じ取り、だからこそあそこまで素晴らしい演技を完成させる事ができたのか、と理解する事ができた。 「ははは、そういう事か。愛の力だな」 うんうん、と嬉しそうに頷く。 そして、さりげなく、美樹に向かってウインクした。 「良かったな、美樹。想いが伝わって!」 美樹は、顔を真っ赤にして由季を睨む。 「な、何、バカな事言ってんだよ!」 「何も、あははは!!」 その時、場内アナウンスが入った。 「さぁ、行こうか美樹。カーテンコールだ」 「ああ」 陸斗は、美樹をひょいっと抱き抱え、お姫様抱っこをした。 「お、おい、陸斗。これでいくのかよ?」 「ああ」 陸斗の腕の中に収まり、嬉しいやら恥ずかしいやらで、美樹は頬を染めてモジモジした。 「観客はこれを望んでいる。そんな気がする」 「……なるほどな。お前も成長したと言う事か」 「そう言う事だ」 陸斗は、美樹の額にキスをした。 美樹の顔は再びポンっと赤くある。 それを見た由季は微笑む。 陸斗も美樹もそれにつられて微笑んだ。 「さぁ、美樹、いくぜ。いつまでも踊り続けようぜ! 俺達の愛の舞を!」 「ああ! そうだな! 陸斗!」 二人は、大歓声が包むステージへと駆け上がって行った。

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