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妖って変態しかいないのかよ
紆余曲折ありつつ、表 が服を着替えてやってくる。
「それでは行くかの。
行く前にひとつ、絶対にわしのそば離れたら行けぬぞ。
妖はみな人間のこと好き、と言うより驚かせたがる、と言った方が正しいじゃろう。
少し目を瞑ってくれ」
表の服を掴み素直に目を瞑る。
(ここでどうせ反抗したところでどうしようもないしな)
ぶわっと強い風が吹いたかと思うと、表に「目を開けて良いぞ」と声をかけられる。
恐る恐る目を開く。
「う、わ、すごっ……」
目の前には漫画とかでみたことがある大きなパーティー会場が広がっている。
シャンデリア? みたいだけど和風な感じで青とか赤とかの色で光っている。
周りにいるのはもちろん人間ではなく妖たち。
本で見たことある奴らから見たことないやつまでたくさんの妖がいる。
「あれ、表って元の、狐の姿にならないのか?」
「うむ、わしは基本的には人間の見た目の姿のままじゃな。
狐の姿じゃと動きずらかったりすること多いからの、こっちの方が幾分か楽なんじゃよ。
お、ほれ、あっちに人間がおるぞ」
どこだ、都探す必要もなくすぐに見つかる。
なぜなら俺と同じようにほとんど裸だったから。
キョロキョロと見回すと妖たちよりもずっと少ないが人間だと思わしき人が数人いる。
いや、ほとんど裸なやつを人間かなって思ってるだけなんだけども。
「……妖って人間を裸にさせてる趣味があるのか?」
「違うぞ、わしのような人間の見た目しておる者もおるからの、区別しやすいように、あとその人間のことを覚えるためじゃな」
「……? どう言うことぉおうわぁ?!」
生暖かいもので背中を撫でられたような感触がした。
ばっと後ろを振り返るが誰もいない。
と思うと今度は右腕に生暖かい食感が体を撫でる。
気持ち悪いし、しかもなんか濡れてんだけど?!
「これ、垢嘗 (漢字読みにくいので以降は垢舐めと表記します)、断りもなく舐めるでない。
こやつは垢舐めじゃ、人間の世界じゃと風呂場にある垢を舐める、と言われておるかもしれぬが。
妖は垢が出ぬからの、人間を見ると見境なく舐めてくるぞ」
「やべーやつじゃん!」
ばっと表の後ろに隠れる。
垢舐めは今だに俺のことを舐めようと近づこうとしている。
「そうじゃが違うぞ。垢舐め、この人間はわしの子、名は影道じゃ。
これから先は勝手に舐めては行けぬぞ。
わしの許可とった後に影道に許可を取らねばならぬぞ」
垢舐めはがっかり、と言ったようは表情をした後、妖たちの中に消えていった。
「妖は色々おるからの、初めだけやらせておけば後々は覚えるからの。
次からは多分、勝手になめてきたりはせんじゃろ」
「舐めてくることあんだ」
「うむ、それはわしのもと離れて野良になった場合じゃな。
野良の人間に関しては早いもん勝ちじゃから、先程のような垢舐めに飼われると一生舐め回されるかもしれぬな」
表の言葉に全身が泡立つ感覚がする。
俺、いつかは人間の世界に戻るけど初めにあったのが表で良かった、オムツ履かせてきたけど。
見た目もほとんど人間だし、人間のこともよく知ってるし。
オムツ履かせてきたけども。
「あのさ、あの、ほとんど裸のやつが俺と同じ人間ってこと?」
「うむ、そうじゃぞ。
じゃが、あやつらのように妖と対等に話しておる者は、こちらに迷い込んできたのはもう十数年も前じゃな。
最近入った者は……おお、あそこにおるぞ」
目を向ければ小柄な男の人間がいる。
口枷のようなものをはめられ全身撫で回されている人間が。
顔は涙やらなんやらでぐちゃぐちゃになっている。
下は俺と違って紐パン履いてるから、その、しっかり勃っているのがわかる。
俺は気まずくて目をそらす。
「なんじゃ、あの人間を飼っておるのは若い妖じゃの。
人間は足の付け根あたりを触られるのを特に嫌がるというに、ありゃ、もう布とれて素っ裸になっておる。
影道、妖の中には目の見えぬものもおる故、ああやって触って人間のことを覚えるんじゃ。
もしくは舐めて味を覚えるんじゃな。
大丈夫じゃ、初めだけじゃ。以降は野良の人間じゃない限りないからの。
ほれ、では挨拶しに行くかの」
「これ見た上であの中に行けと?!」
必死の抵抗も叶わず俺は妖の中へと引き摺られていく。
次回、俺全身舐めわされる!
じゃねーんだよ、早く人間の世界に帰らせてくれー!
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