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遊びに行きました

あれから結局戻る方法はわからず数日経った。 俺は暇で時々コケ蔵のところに遊びにいく以外は(ヒョウ)の仕事を手伝っている。 表は『早く戻してやりたいの』なんて言って毎日昼夜問わずに調べている。 いいやつすぎんだろ。 本当に表に拾われてよかったと思う。 そんな折に俺宛の手紙が飛んでくる。 ここの世界では実際に手紙が風に乗って飛んでくるのだ。 妖術で風を操って飛ばすらしい。 手紙の主は来栖だった。 『久しぶり! 元気だった? 来栖だよ。 あのさ、この間話してたことなんだけど、ちょっと面白い話を聞いてさ。 手紙では書けないからもしよかったら俺のうちまで来てくれないかな? みっちーのご主人が許可したら手紙についてるタグに向かって僕の名前呼んで! そしたら僕のところに一瞬で来れるからさ』 と言った内容だった。 「表、表〜。俺ちょっと友達の人間のとこ遊びに行ってきていい?」 「良いぞ〜、首輪だけは忘れるでないぞ〜」 とあっさり許可が出たため俺は来栖の名前を呼ぶ。 びゅうっと強い風が吹いたかと思うと俺は知らない大きな屋敷の前にいた。 で、でっけぇ…… 圧倒されているとぽんっと軽い音と共に見知った顔が現れる。 「いらっしゃい、みっちー! こっち、こっちだよ」 挨拶もそこそこに最近あったことを話す。 コケ蔵って妖の友達ができた話や来栖の主人が今日は仕事でいないことなんかを。 来栖に引っ張られ家の中に入る。 途端、来栖の顔がきりっと真面目そうな顔になる。 「ここなら誰かに聞かれたりはしないからさ」 来栖が畳の上に座ったのに習い俺も畳の上に座る。 「人間の世界に戻る方法なんだけどさ、うーん……本当なのかわかんないけど聞いたんだけど。 えーっとね、みっちーは並行世界ってわかる?」 「へ、並行世界?」 「えっと……他の言い方だとパラレルワールド? って言い方があるらしいんだけど」 パラレルワールドなら聞いたことがある。 確かある過去を始まりとしてそこから分岐していく感じだ。 もっとわかりやすく言えばゲームで出された選択肢ををどっちか選ぶことによって物語が変わるって話だ。 その物語の分岐ルートが数えられないほどにたくさんあるってこと。 「それならわかるけどそれがどうしたんだ?」 「えっとつまりなんだけど……今のみっちー以外の世界線があるとするじゃん? こんなふうに妖の世界に来ちゃったみっちーと人間界にいるみっちーとその他いろんな分岐があるわけじゃん。 その中でも妖の世界に来ちゃったみっちーの分岐がもう一つあることが重要なんだ。 もう一つある妖の世界にいるみっちーがさ、『妖の世界に残る』って決断をするともう一つの世界線でのみっちーは人間の世界へ戻るための扉が開くらしんだよ」 ……どういうことだ? 全然わかっていなさそうな俺をみかねて来栖が紙に図を描いてくれる。 なんとなく理解できた。 簡単に言えばどこかの別の世界線の妖の世界にいる俺が『妖の世界に残る』って決断をすれば俺は人間の世界へ戻れるってこと。 なるほど、とは思うけど問題は。 「その別の世界線の俺と連絡を取る方法がないってこと、なんだろうな」 「そうなんだよね…… でもみっちーは何かの偶然でこっちに来ちゃったし可能性があると言えばあると思うんだよ」 確かに俺がそうなったように他の世界線の俺が来ている可能性も考えられる。 けど、中には妖のことを祓ってやる、なんて過激派の俺の世界線とか、来て早々死んじまってる世界線の俺もありえるわけだ。 そうだったら詰みだ。 二度と戻れないだろうな。 でも。 「戻れなかったとしても来栖とかコケ蔵とか友達もできたし悪くはないんじゃないかなって思うんだよな。 ……戻りたいって気持ちもあるんだけどさ」 「みっちー……」 「あ、これって表、俺のこと飼ってる妖に言ってもいいのか?」 「もちろん、みっちーがいいなら。 あ、このこと書かれた本あるんだ。これも渡しておくよ」 渡された本は随分と分厚くたくさん栞が挟まれている。 来栖も俺のためにこんなにやってくれたんだと思うと泣きそうになる。 ぐしぐしと目を擦る。 「あ、そう言えばなんだけどさ、前妖と契りを交わしたら永遠の命が、って話したじゃんか」 「うん。それがどうしたの?」 「その契りってもし妖と交わしたろどうなるんだ?」 「えっと簡単に言うと妖と契りを交わすとその妖に命を捧げることになるんだ。 だから契りを交わした妖が死ぬまで死ななくなる。 あとはその妖と子作り出来るようになるとか……まあそこはいいよね」 「その契りはどうやってするんだ?」 「ああ、それはご主人とセッ○スするんだよ」 「よしなら大丈夫だ」 その後は来栖と一緒に妖の世界のすごろくで遊んだ。 妖の世界ではすごろくにも妖術がかけられており、止まったマスのことが本当に起きるようになっている。 犬に変化したり大量のお金が現れたり……(ゲームが終わった途端元に戻るけど) 俺は日が暮れるまで楽しんだ。

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