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番外編 同級生
※梓が見つかる前のお話です。
***
『今日の20時に、いつものBARで集合。』
そんな連絡が立岡から入った。同じ内容を冴島にも送っている。
本家の自室でそれを確認して、時計を見ると今はもう19時半。早くここを出ないと間に合わない。
「夏目」
幹部室に行って名前を呼ぶと、犬みたいに駆け寄ってきた夏目。
「車出してくれ」
「はい!」
バタバタと尻尾が見える。車を出してもらって、約束の5分前にはそこに着いた。
「終わったら電話してください!迎えに来ます!」
「ありがとう」
夏目と別れ、店内に入るとすぐに奥の部屋に案内される。
「待ってたよ、お前が最後。ってことで今日は志乃持ちね」
「わーい、早く来てよかった。久々に飲も」
立岡と冴島。高校の頃の同級生達。
1人は情報屋で、1人は医者、何とも凸凹した歪な組み合わせ。
それぞれ酒を頼んで、早速本題に入った。
「お前の欲しがってた写真」
「······助かる」
立岡から渡された写真に目を通すと、懐かしさが溢れてきた。
「名前は······あー、また忘れた。もういいや、お前の姫さんね。男だけど」
「可愛い顔してるね。どういう関係?」
「言わない」
梓が居なくなってから何年も立った。
今更どうしているのか知りたくなって、立岡に調べさせている。
「その子のこと調べるの結構大変なんだよ。施設出だから、余計に」
「······施設か」
「今は何とか1人暮らししてるみたいだけどね」
「保護するの?」
冴島が疑うような目で見てくる。
保護······は視野にはいれているけれど、今はそういうつもりはない。
「会いたいんだ。今までどうやって生きてきたのか、本人から聞きたい。」
「好きなの?」
「······好き、とは違うと思う。」
そんな時、酒が運ばれてくる。
「お前は臆病だからねぇ。もうちょっと楽に考えたらいいのに。」
「あ、それ俺も思う。見た目は厳ついくせに、中身は乙女かよ」
「お前ら······」
立岡に臆病呼ばわりされ、冴島には乙女と言われる。
俺にこんなことを言うのは、親父と母さん以外にこいつらしかいない。
「さーて、じゃあとりあえず乾杯」
グラスが合わさり、カチンと音が鳴った。
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