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番外編 同級生
「お前はまず女関係を落ち着かせたら?」
「いやだから、あれはうちが持ってる店だから······」
「そんなの言い訳じゃん。俺ならそんな彼氏嫌だ。」
「そうだそうだー!······あー、眠たい······」
冴島はそんなに強くないくせに酒を飲んで、もう船を漕いでいる。
「おい冴島、寝るなよ」
「······家まで送って」
「仕方ねえな······」
まあ、送るのは俺じゃなくて夏目なんだけど。
「志乃」
「あ?」
立岡が珍しく真剣に俺を見る。
同じような視線を返すと、目を細めた。
「その姫さんがお前を拒否したら、潔く離れろよ。」
梓の事を言われて、胸あたりがキュッとする。
「······ああ」
「固執しちゃ彼が可哀想だ。」
わかっている。
今はそのつもりだ。ただ話がしたいだけだから。
「表で生きてるならそのままの方がいいんだし。わざわざ裏に連れ込むようなことはやめてやれよ。」
「わかってる」
「それから······親父にはいつ言うつもり?あの人も隠れて姫さんを探してるみたいだけど······?」
「今は言わない。見つかってからでいい」
突然がたんっと大きな音がした。
何事かと目を向ければ冴島がテーブルに突っ伏して眠っている。立岡は呆れたように溜息を吐いて冴島の頭を軽く叩いた。
「飲みすぎなんだよ、バカが。」
「······この中じゃ俺が1番頭がいい」
「そういうことじゃないんだよ。いい加減飲み方を覚えろよ」
「うるさい。······ねえ志乃」
立岡と小競り合いをしていたくせに、俺に視線を寄こした冴島は、へらりと笑う。
「神崎君ってさ、すごく綺麗だよね」
「唐突だな」
「あの······あの綺麗な目をさぁ、じっと見てたいよね」
「······それは、医者の視点から言ってんのか?」
「冴島怖い。いつか眼球オタクとかになりそうな発言なんだけど」
立岡が俺のそばに寄って来て、冴島から距離をとる。
「違う違う、えっと······、あの目で見られたらさ、女性はイチコロだよねって話。」
「若干内容が変わったように聞こえるけどね。でも確かに、俺は神崎と仲いい方だと思うけど、いつ見ても綺麗」
「ハーフだからな」
「それだけじゃないって。人って欠点がある方が魅力的なんだよ。ほら、神崎は危なっかしいところあるから。」
完璧は面白くない。と言い切った立岡に、納得して頷いた。
「さあて、冴島も寝そうだし、そろそろ帰ろっかぁ。」
夏目に連絡をして、会計を済ませた。
冴島を支えながら外に出ると、すぐに夏目がやって来て、俺達を見てくすくすと笑う。
「なんか、高校生の頃もよく3人で一緒にいたから、この光景は懐かしいですね。」
「そう?今度はお前も仲間に入れてあげるね。なんてったって俺達の後輩だもんねぇ」
「立岡さんは嫌です。散々こき使われた記憶しかない。」
「そんなことしてないじゃん!」
冴島を車に乗せ、立岡とはそこで別れた。冴島を家に送り、俺と夏目は本家に戻る。
早く梓に会いたい。
焦りのような気持ちを抱えながら、立岡に貰った梓の写真を眺めた。
番外編 同級生
END
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