266 / 292

番外編 3人の先輩

※高校時代のお話 ※夏目視点 *** この高校はそんなにレベルは高くはない。けれど校則の緩さと、総合高校っていう点から年々倍率は上がっている。 そして今年の倍率はやばかったらしい。 その1番の原因は校則でも総合高校ってことでもなかった。 「志乃さん!」 「ああ、夏目」 仲の良い先輩、志乃さんの教室は今日も騒がしい。同じクラスには志乃さんの友達の立岡さんに冴島さんもいた。 冴島さんは受験勉強をしてる時に、志乃さんと立岡さんが喧嘩して、何故かそのせいで仲良くなったらしい。よくわからないけれど、翌日立岡さんは腕の骨を折っていたから、それほど酷い喧嘩だったようだ。 「先生達が話してましたよ。今年の入学生に女子が多い理由」 「えー、何何?気になる」 志乃さんに話してるのに、横から割って入ってくるこの人が俺は苦手。 「立岡さん、うるさいです。俺は今志乃さんに話してます。」 「はっ?お前よくそんなこと言えるよね。俺先輩だよ?失礼極まりない。志乃も失礼な人は嫌いだよ。」 「······志乃さんには失礼のないようにしてます。」 「へぇ、夏目は人を選ぶんだァ。」 立岡さんに責められるようにそう言われると、少し罪悪感を感じてしまう。 「立岡やめろよ。······で、その理由って何なんだ?」 「あ、えっと······あの······」 さっきまで自分が話していたことなのに、いざ志乃さんにふられると吃ってしまう。 「夏目君、とりあえず座ったら?ほら、椅子貸してあげる。」 「あ、ありがとうございます······。」 冴島さんに椅子を貸してもらって、3人の中に入った。 「り、理由なんですけど······志乃さん狙いだそうです。」 「俺?」 「はい。」 志乃さんは眞宮組の若頭で有名だ。それに加えて容姿端麗で、勉強だって出来る。 「皆志乃さんの彼女になりたいって」 「······へえ」 「えー、志乃の彼女とか絶対大変じゃん。毎晩盛ってそう」 立岡さんがケラケラと笑うのを、志乃さんは否定しない。冴島さんはドン引きしてるみたいで、志乃さんを白い目で見ていた。 「──あ、あのっ!」 「え······」 突然聞こえてきた女の声。振り返ると顔を真っ赤にした女子が、志乃さんを真っ直ぐに見ていた。 「あの、話があってっ」 「······俺か?」 「はい。あの、少しいいですか······?」 あ、これ告白するんだろうな。志乃さんは気だるそうに席を立って教室を出て行く。 「あいつも大変だよねえ。彼女とか言ってる立場じゃないのにね。自分の仕事で大変なんだよ。あいつの彼女になるってことは、死ぬ覚悟は出来てるってことだよ?」 「そんなこと考えて告白してないだろ。ただ容姿に惹かれただけだと思うけど。」 立岡さんと冴島さんが推測をする中、俺はただああやって堂々と告白できる女子が羨ましいなぁと思った。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!