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番外編 子供預かりました

「ってことで、預かった。」 「いや、意味がわからないよ」 ある日突然、志乃が子供を連れて帰ってきた。 どうやら夏目さんの従姉妹の子供らしい。従姉妹さんの所は共働きで、いつも御両親に預けていたらしいけど、今日はたまたま忙しかったよだ。それで夏目さんの御両親に預かって欲しいって言ったらしいけど、用事があって、夏目さんが預かることになったとか。 「で、何でここに?」 「夏目にしてもらわないといけない仕事があって、だからその間預かる。」 「······もっといい方法があったと思うけどね。」 「そんな事言うなよ。子供好きだろ?」 子供は······まあ、好き。 施設にいた頃、周りに年下の子供は沢山いた。一緒に遊んだのを覚えてる。 志乃に背中を押されて、俺の前に来たその子は、ぬいぐるみを抱きしめて、恥ずかしそうに俺を見上げる。 「お名前は何て言うの?」 「······あおくん」 「あおくんか。俺は梓だよ。」 「あずさ、お兄ちゃん」 人見知りなのかと思ったけど、すぐに笑顔を見せてくれた。抱っこすると「あのね、この子はちーたんだよ!」とぬいぐるみを見せてくれる。 「へぇ、ちーたんとはお友達なの?」 「ううん!家族なの!」 あおくんを抱っこしたまま、リビングに行く俺の後ろをついてくる志乃。 「あおくんは食べれないものとかあるかなぁ?」 「ううん、なんでも食べれるんだよ!」 「凄いねぇ」 ソファに座って、あおくんのさらさらな髪を撫でる。少し赤っぽい髪色は、夏目さんに似てる。 「あのお兄ちゃんの名前は聞いた?」 「ぁ、う、うん。志乃お兄ちゃん······でもね、でも······志乃お兄ちゃん、怖い」 「あー、お顔が怖いよね。でもね、志乃お兄ちゃんは本当はすごく優しくてねぇ、怒ったりしないんだよ。──志乃」 名前を呼ぶと、こっちに来てくれて、床に膝をついてあおくんの目線の高さに合わせてくれる。 「志乃が怖いって。だから優しく笑って」 「······こうか?」 「うん、そうそう。ほらあおくん、怖くないでしょ?」 「あのね、お口をね、もっと······んふふ、これくらい上げるの!」 あおくんの小さな手に頬を捏ねられる志乃が面白い。 「あのね、笑ってるといい事あるって、ママが言ってたよ!」 「そうなんだね」 「うん!だからね、志乃お兄ちゃんも笑ってた方がいいんだよ!」 小さい子って、何でこんなに可愛いんだろう。抱きしめると、楽しそうに笑って俺を抱きしめ返してくれた。

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