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番外編 子供預かりました

じーっと志乃を見るあおくん。 怖くないってわかったから、逆に興味が湧いたのかもしれない。 「あおくん、志乃に肩車してもらっておいで」 「えっ!肩車できるの!?」 「できるよ、おいで。」 努めて優しく笑う志乃。あおくんが肩に飛び乗って、ちゃんと体を支えてから立ち上がった。 「わぁ!たかーいっ!」 「あれ、志乃って身長いくつ?」 「178とか」 「え、180無かったの?あると思ってた。態度がでかいから?」 「······悪かったな。」 俺がケラケラと笑うと、志乃は不貞腐れて「あおはそんなこと言わないもんな」とあおくんに話を振る。 「あおくんはね、志乃お兄ちゃん大好きー!」 「そうかそうか。」 「だってね、パパはね、肩車なんてしてくれないよ!」 「そうなのか?体が悪いとか?」 「ううん!なんかねぇ、めんどうって言ってた!どういうことかなぁ」 その言葉に苦笑いを零すことしか出来ない。俺も面倒臭いって何度も言われたことがあるし。あの時は理解出来なかったけれど、今は言葉の意味がわかるから、少し悲しい。 「なら夏目······斗真にしえもらえ。あいつならしてくれるよ。」 「斗真兄ちゃんもできるの······?」 「ああ、多分な。」 そっと肩からあおくんを降ろした志乃は、そのまま俺の隣に座ってあおくんを向かい合わせにして膝に乗せる。 「あおくんのパパは仕事で忙しいんだね。」 「お仕事大変だって言ってた!ママも言ってるけどね、ママは帰ってきてからも僕と遊んでくれるの!」 「ママは優しいんだね。」 「うん!」 志乃の膝の上でちーたんを抱きしめて、志乃の胸にもたれ掛かる。 「斗真兄ちゃん、いつ来るの?」 「んー、いつだろうな。なるべく早く来るって言ってたけど。」 「······ちーたんと待ってるの。」 ムギュって音がしそうなほど強くぬいぐるみを抱きしめる。その姿が愛らしくて、志乃からあおくんを奪って抱きしめた。 「ふふっ、梓お兄ちゃん!」 「あー可愛い。子供欲しい······」 「子作りするか?」 「無理でしょ。バカ」 志乃を睨みつけると、強く抱き締めてくる。間にあおくんが挟まって、少し窮屈なはずなのに嬉しそうにする。 「あー!僕も志乃お兄ちゃんにギューってする!」 「ん、おいで」 例えば志乃と俺の間に子供がいたら、こんな感じなのかなぁって、優しくて、少し寂しい気持ちになった。

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