274 / 292
番外編 26歳組
※速水と相馬のお話です。速水視点となってます。
***
眞宮組では、本家で暮らす者、眞宮の持つマンションで暮らす者がいる。
俺はどちらにも当てはまらず、自分の家で暮らしているが、今日はたまたま徹夜をすることになって晩飯を食べようと、眞宮の台所に顔を出す。
「あ、速水じゃん。お前まだ帰ってなかったの?」
「······お前の方こそ。」
「うん、俺は今日見回りあるからさ。······あ、もしかして晩飯?残念でしたー!もう空っぽ。」
炊飯器を片付けて見せてくる。そこには米粒1つ残っていない。
「俺ね、今から買い物行くんだけど、一緒に行かねえ?」
「······行く」
「うん。歩く?」
「そうだな」
どうせ夜は部屋にこもるんだし、少しくらい体を動かしておいた方がいいだろう。
「じゃあ行こうぜ。あー!腹減ったー!」
「お前も何も食べてないの?」
「食べてねえよ!ここに来たらもう空っぽだったからさぁ。」
何が楽しいのか、ふんふんと鼻歌を歌いながら隣を歩く相馬。
俺は正直、相馬が苦手だ。
いつも明るくて無邪気で、無垢なその姿はこの世界には似合わない。なのに俺と同じ仕事をしていることが不思議で仕方が無い。
「なあ何でそんなに離れてんの?」
「······別に」
「お前ってドライだよね。関西人だろ?関西人ってもっと温かいんじゃねえの?」
「関西人が必ずしも温かいと思うなよ。」
「えー、まあお前見てたらわかるけど······。」
くだらない会話をしながらスーパーに行く。思えばこうして夜ゆっくり歩くことなんて、ほとんど無くなったな。
「でもお前、梓さんには優しいよな。」
「若の恋人だからな。それに親父の甥っ子だし。」
「······本当ドライだ。あのビールよりスーパードライ。」
「面白くねえんだよ。」
相馬を睨みつけると、相馬自身が自分の言葉にツボったようでゲラゲラと笑っている。······そのまま笑い死にやがれ。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!