277 / 292

番外編 たまには下も見て

眞宮組に着いて、すぐにパソコンの前に座った。 俺がガムを踏んだあの辺の監視カメラの映像から、ガムを捨てた本人を見つけだしてやろうと思って。 「あ、立岡さん。ついでにこの仕事もしてください。」 「うるさいよ夏目。俺は今最高にキレてる。」 「何があったんですか?······あ、やっぱり聞くのやめます。面倒臭そう。」 「は?聞いたからには最後まで聞けよ。」 あった事をきっちりしっかり説明すると「そんな事で······」と呆れられた。は?俺が悪いの? 「それくらい許してあげればいいじゃないですか。」 「え、何で?自分のした事には責任持たないと。そう教わらなかったの?」 「そうじゃなくて······。普段はもっと心広いのにどうしたんですか。生理前の女子みたい。」 「お前にそんなこと言われる日が来るなんてね······。」 そんな夏目にも腹が立って、夏目を睨み付けた。 「何ですか、怖いです。」 「俺が、生理前の女子だって?腹が立つな。」 「例えですよ」 「それでもだよ。はい、早く帰って。俺はこれから犯人探しをするから。」 「この仕事もお願いしますね。」 「誰がやるかバーカ!!」 渡されたものを投げ返すと、夏目も流石にイラついたようで、俺の頭を叩いてきた。 「ガキみたいな大人だな。面倒くせぇ」 ついでに暴言まで吐かれて、俺の心は粉々。無言で部屋を去って親父の元に行く。あの人のところに行くのが1番平和だ。 「親父」 「立岡か。今日は来てたんだな。」 「仕事が終わったから、そのまま来ました。······俺の心が粉砕したから休ませて。」 「粉砕?何があったんだよ。」 親父に今日あったことを話すと、ケラケラ笑って「それは災難だったな」と言う。 「それで犯人探してやろうと思ったら、夏目にガキみたいな大人とか言われてぇ······。」 「まあ、否定は出来ないよな。」 「あー!親父までそんなこと言う!」 わざとらしく拗ねてみると、また笑われた。もう、何なんだ。 「それくらいでいいだろ。お前は情報屋としても稼いでるんだから、新しい靴を買えよ。」 「そう、ですけどー······。うん、確かに一般人にこんなことするのはダメかぁ。」 「ああ。時間が空いたならこの仕事をやってくれ。」 「えー······。やりますけどぉ······」 親父から仕事を預かって、部屋に戻る。 さっきまでムカムカしていた心が落ち着いてきた。 「後で夏目に謝るかぁ」 ガムを捨てた人間を怒るのはやめるから、その代わりに明日も今日くらい良い天気で、過ごしやすい気温でありますようにって祈った。 「それで俺も、たまには下を見て歩こう······。」 少しだけ反省をした1日だった。 番外編 たまには下も見て END

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!