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番外編 たまには下も見て
眞宮組に着いて、すぐにパソコンの前に座った。
俺がガムを踏んだあの辺の監視カメラの映像から、ガムを捨てた本人を見つけだしてやろうと思って。
「あ、立岡さん。ついでにこの仕事もしてください。」
「うるさいよ夏目。俺は今最高にキレてる。」
「何があったんですか?······あ、やっぱり聞くのやめます。面倒臭そう。」
「は?聞いたからには最後まで聞けよ。」
あった事をきっちりしっかり説明すると「そんな事で······」と呆れられた。は?俺が悪いの?
「それくらい許してあげればいいじゃないですか。」
「え、何で?自分のした事には責任持たないと。そう教わらなかったの?」
「そうじゃなくて······。普段はもっと心広いのにどうしたんですか。生理前の女子みたい。」
「お前にそんなこと言われる日が来るなんてね······。」
そんな夏目にも腹が立って、夏目を睨み付けた。
「何ですか、怖いです。」
「俺が、生理前の女子だって?腹が立つな。」
「例えですよ」
「それでもだよ。はい、早く帰って。俺はこれから犯人探しをするから。」
「この仕事もお願いしますね。」
「誰がやるかバーカ!!」
渡されたものを投げ返すと、夏目も流石にイラついたようで、俺の頭を叩いてきた。
「ガキみたいな大人だな。面倒くせぇ」
ついでに暴言まで吐かれて、俺の心は粉々。無言で部屋を去って親父の元に行く。あの人のところに行くのが1番平和だ。
「親父」
「立岡か。今日は来てたんだな。」
「仕事が終わったから、そのまま来ました。······俺の心が粉砕したから休ませて。」
「粉砕?何があったんだよ。」
親父に今日あったことを話すと、ケラケラ笑って「それは災難だったな」と言う。
「それで犯人探してやろうと思ったら、夏目にガキみたいな大人とか言われてぇ······。」
「まあ、否定は出来ないよな。」
「あー!親父までそんなこと言う!」
わざとらしく拗ねてみると、また笑われた。もう、何なんだ。
「それくらいでいいだろ。お前は情報屋としても稼いでるんだから、新しい靴を買えよ。」
「そう、ですけどー······。うん、確かに一般人にこんなことするのはダメかぁ。」
「ああ。時間が空いたならこの仕事をやってくれ。」
「えー······。やりますけどぉ······」
親父から仕事を預かって、部屋に戻る。
さっきまでムカムカしていた心が落ち着いてきた。
「後で夏目に謝るかぁ」
ガムを捨てた人間を怒るのはやめるから、その代わりに明日も今日くらい良い天気で、過ごしやすい気温でありますようにって祈った。
「それで俺も、たまには下を見て歩こう······。」
少しだけ反省をした1日だった。
番外編 たまには下も見て
END
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