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第3話

俺が志乃さんに監禁されるようになったのは2週間前から。 親は俺の小さな頃に亡くなって、頼る人も居なかったらしく、施設で育った俺。 通っている大学のサークル活動のせいで帰りが遅くなって、ダラダラと繁華街を歩いていると前から歩いてきたのが志乃さんだ。 いつもなら絶対、志乃さんの噂も聞いていたし、そんな怖い人が歩いてきたらわかる筈なのに気付かなくて、正面衝突した。 多分、疲れてたんだと思う。 慌てて上を見上げると志乃さんが鋭い目で睨んでいて、身体中の血が全部抜けてなくなるんじゃないかってくらい怖かったから必死で謝った。 けれど、それを志乃さんが俺の腕を掴んだことによって止められる。 「佐倉(さくら)梓」 「···へ?」 遠目では見たことあるけれど、初めてこういう風に顔を向き合わせて会ったのに、どうして名前を知ってるんだろう。 「梓だな」 「···何で、俺の名前···?」 志乃さんは俺の質問に答えることなく、掴んだままの俺の腕を引っ張ってどこかに向かい歩いて行く。 「あ、あのっ」 「············」 「し、志乃さんっ」 「···何だ」 足を止めて振り返った志乃さん。 切れ長の目が俺を見て思わずビクッと震えてしまう。 「ど、どこに、行くんですか。俺···早く帰って、課題、しないと···」 「お前は···大学生か?」 「はい」 「ならもう辞めろ。」 「え···?」 志乃さんが何を言っているのか俺にはさっぱりわからない。困惑を隠せないでいるとまた腕を引かれてどこかに連れていかれる。 「い、嫌です、離してっ」 「暴れるな」 「離し───っゔ···」 突然、首裏に衝撃が走って、俺の意識はそこで途切れた。

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