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第9話 志乃side

俺を怯えた目で見るやつは多い。 仕事の都合で夜の繁華街に出向くと遠巻きに俺を見る奴らと、俺に近付き話しかけてくる奴らがいた。 「志乃さんっ!最近来てくれないじゃない!私の店に飲みに来てよ!」 「私のところにも来て!」 何の断りもなく俺の腕に自らの腕を絡めてくる女達を振り払い、一人、ネオンの色を浴びていると、トン、と体に衝撃が走った後、目の前で男が顔面を蒼白にして俺を見上げていた。 その顔はどこかで見たことのある顔で、記憶を辿れば一人の人物にピタリと当てはまった。思い違いではない、間違いない。 そして咄嗟に頭を下げて必死で謝ろうとするそいつの腕を掴む。 「佐倉梓」 「···へ?」 キョトンとしているそいつを、絶対に逃がしては行けない。腕をつかむ力を強くした。 「梓だな」 「···何で、俺の名前···?」 もう一度名前を確認すると肯定する言葉が帰ってきて、それに返事をすることなく踵を返し、俺の家に向かい歩く。 「あ、あのっ」 「············」 「し、志乃さんっ」 「···何だ」 名前を呼ばれて立ち止まり、振り返る。 ビクッと震えた梓は俺に怯えているらしい。 「ど、どこに、行くんですか。俺···早く帰って、課題、しないと···」 「お前は···大学生か?」 「はい」 そんな情報を俺は一切知らなくて、そのことに対し腹が立った。 「ならもう辞めろ。」 「え···?」 困惑を隠せない様子の梓の腕を引き、また歩き出す。 「い、嫌です、離してっ」 「暴れるな」 「離し───っゔ···」 暴れられるのは面倒で、梓の首裏に手刀を入れて意識を落とさせた。

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