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第10話
***
目の前で泣き喚く梓を慰める方法なんて知らない。
俺は小さい時から泣いていてはいけないと教えられていたし、だから、そのせいで泣き方も忘れた。
「っ、う···、ひっ、ぅ···」
「梓」
「ゃっ···さわ、ないで···っ」
俺から距離を取り床に座って震える梓。
多分、俺が梓に対して酷いことをしたんだと思う。
それか眠たくて機嫌が悪いかのどちらかだ。
「寝るか?」
「嫌···志乃さんは、1人で寝て、くださいっ」
どうやら眠たいわけじゃないらしい。
眉を寄せて、こういう時はどうしたらいいのか考えながら梓を見ていると、不意に目が合って、梓が身体を震わせて怯え出す。
「···ごめ、なさい···怒るの、嫌です···」
別に怒ってないから何とも言えなくて、梓に近づき目線が同じになる様に床に座り込む。
「梓、こっちに来い」
「···っ、何も、しないで···」
「しねえよ」
腕を広げそう言うと、恐る恐るという風に梓が俺の腕の中に入ってくる。
「今日は、寝てただけか?」
「···は、い」
「疲れてたのか」
「···わかん、ない···です」
チッと舌打ちをして、梓を見下ろす。
「はぁ···」
舌打ちをしてから後悔したのは、自分が威圧をするような態度しかとれないこと。この低いコミュニケーション能力に嫌になる。
溜息を吐いて、梓を腕の中に閉じ込めたまま立ち上がる。
「眠くねえかもしんねえけど、ベッド行くぞ」
「···うん」
俺の肩に頬を付け、体の力を抜く梓。
その様子は、少し可愛かった。
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