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第11話
昼間、ずっと眠っていたらしい梓。
なのに俺の隣で既に寝息を立て、ぐっすりと眠っていて、さっきの行為で疲れたんだろうと推測する。
俺も寝ようと梓を抱き枕代わりに抱きしめた時、電話を知らせる音が鳴り、音を鳴り響かせる携帯に手を伸ばす。
画面を見れば仕事仲間の立岡 からだった。
「何だ」
「松岡真治 捕まえたぜ。どうする」
さっきの電話の音くらいじゃ梓は起きやしない。顔に掛かる髪を退けてやる。
「明日そっちに行く。お前は見張ってろ」
「他の奴に見張らせる。俺は今からまた仕事があるからさ」
「なら夏目 に見張るように言え。お前は夏目がそこに着いてから仕事に行け」
もぞっと動いた梓は、無意識に俺に擦り寄ってきた。
「はいはい。···なあ志乃」
「あ?」
掛布団を梓の肩までかけてやると、少しだけ強ばっていた顔が柔らかくなる。どうやら寒かったらしい。
「お前のお姫さん、見つかったんだろ?」
「ああ、そうだな」
「急ぎて松岡真治を見つけさせたのも、その姫さんの為か?」
「だと言ったら?」
梓の頬を撫でると少しだけ冷たい。
「恋は盲目って言うけどよ、ちゃんと本来やるべき仕事もしろよ」
「お前に言われなくてもわかってる。そもそもそんなんじゃねえしな。じゃあな、切るぞ」
電話を切って、携帯を元あった場所に戻し、今度こそ目を閉じる。
明日の予定を考えてから、眠ることに専念する。
気づけば俺は眠っていて、朝起きたのは梓のくしゃみでだった。
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