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第12話
小さなくしゃみの音で目を覚ました俺は、隣にいる梓に目を向ける。
小さく丸まってる梓は風邪でも引いたのか、布団を掛けてやってるのに寒そうにしていた。
手を伸ばして首元に触れると熱くて眉が寄る。
昨日の昼間ずっと眠っていたらしいがもしかして体調が悪かったんじゃないか?と今更ながらに気になった。
俺は風邪なんて引いたことがないからどう対処してやればいいのかわからなくて、とりあえず怪我をした時に診てもらっている医者の冴島 に連絡をした。
「冴島です」
「俺だ。すぐに来てくれ」
「志乃か。何?怪我でもした?」
俺を呼び捨てにするのは立岡と冴島くらいだ。
「いや、多分風邪だ」
「え!?志乃が!?」
「違う」
「わかった。最近噂になってる子のこと?」
「···噂?」
何のことだかわからなくて、聞き返すと冴島は溜息を吐く。
「監禁してるんでしょ?人を」
「···それが噂になってるのか?」
「なってるよ。あの志乃が街で男を捕まえてどこかに連れて行ったって。その男の子は大学生で、志乃が連れて行った次の日から、今は学校に行けてもいない。ってね」
「···そうか。」
「否定しないって事と、お前が世話をしてる誰かが風邪ってことは、その噂は本当なんだね。」
「ああ」
肯定すれば冴島はクスクスと笑う。
「わかった。大切にしてるみたいだから、急いで行くよ」
「頼む」
電話を切る。そのタイミングでまた梓がくしゃみをした。ほんのり頬が赤くて、布団を手繰り寄せている。
「冴島が来るから、もう少し我慢な」
起きていない梓にそう声をかけ、軽く頬を撫でた。
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