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第14話 梓side

目を開けたら部屋には誰もいなかった。 やけに怠い体を起こして辺りを見回す。 やっぱり志乃さんはいない。 ベッドから降りて寝室を出る。 リビングに行けば知らない人がいて驚いた。 「あ、おはよう。起きれたんだね」 「ぁ、だ、誰···?」 「冴島 (しゅう)。医者だよ。君が風邪をひいたみたいだって志乃から連絡が来てね。志乃は今仕事に行ってるから俺が君を見てたってわけ」 冴島さんは俺に近付き、手を伸ばして額に触れる。 「喉痛いんじゃない?大丈夫?」 「···痛いです」 「多分ご飯とか食べるの辛いだろうから、さっきキッチン漁ってたらヨーグルトに蜂蜜があったから、それでも食べようか」 「はい···あの、冴島さん···」 「ん?」 柔らかい雰囲気をしている冴島さん。 志乃さんとどういう関係なんだろう。 医者って言ってたけど、志乃さんが家に呼ぶくらいだ。信用されてるんだと思う。 「志乃さんと、どういう関係···ですか···?」 「中学の頃からの同級生だよ。」 古くからの友達なら、信用されてる筈だ。 なるほど、と頷くと「君は?」と聞かれる。 「俺、は···わからないんです。ここに連れてこられた理由も、何も···。でも志乃さんは俺のことを知ってたみたいで···」 「ふうん?」 「冴島さんは、わかりますか···?」 「いや、俺は長い間志乃といるけど、あいつの考えてる事を理解出来たことがない。だから君のその疑問にも答えてあげられない。ごめんね」 長い間一緒にいるのに、考えていることがわからないなんて、志乃さんはどれだけ本心を見せてないんだろう。 「ほら、食べようか。それともお腹すいてない?もしそうなら薬だけでも飲んで眠っててほしいな」 「···冴島さん。」 「ん?」 「冴島さんは、何歳ですか···?」 「26歳だよ」 なら、志乃さんも恐らく26歳なんだろう。 俺より6歳も年上なんだな。 「どうしたの?志乃の事知りたい?」 「···知りたい、です」 「教えてあげるよ。その代わりこれだけでも飲んでね」 と冴島さんに言われ、俺は1度頷いた。

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