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第16話 志乃side
家を出て、本家に行くと俺を出迎える組員達。
立岡が捕まえた松岡真治に会うために、夏目に見張らせている地下室に足を運ぶ。
「若!お疲れ様です」
夏目が頭を下げたの事に軽く片手を挙げて返事をし、鉄格子の向こうの壁に手足を拘束され、地面に転がる松岡真治に視線を向ける。
散々に殴られたのだろう、その体はここから見える範囲でも血が流れていた。
「吐いたか?」
「はい。自白剤を打てばすぐに」
なら後で報告にこさせればいいか。
鉄格子の鍵を開け、中に入る。
松岡の体を軽く蹴れば呻きながら目を覚まし、俺を見てガクガクと震え出す。
「お、れは···全部っ、言いましたっ」
その様子を見て、嘘ではないことを確認した。
俺は地下から出て本家にある自分の部屋に移動した。中に入ると何故か立岡が居て、「お疲れ」と片手を挙げてくる。
「何でいる」
「昨日仕事が終わった後にまたここに用事があって来たんだよ。で、そのままここに泊まったんだ。久しぶりにぐっすり眠れた」
「用事って何だ。」
「親父さんと酒飲むこと」
ヘラヘラと笑う立岡に舌打ちを零す。
俺はできるなら今すぐに梓の元に帰って、無事かどうかを確認したい。
「姫さんの名前、何だったっけ。」
「···梓」
「梓君ねぇ。松岡真治とどういう関係?」
「それを確かめる為に探してたんだ。後で夏目が報告に来る。」
「ふうん。で、お前と梓君は、今はどういう関係?」
質問が多くて面倒臭い。
その気持ちを込めて睨みつけると両手を上げて「悪い悪い」と笑いながら言う。
「今は梓のことを、これ以上言うつもりは無い。」
「名前しか教えてもらってねえよ」
「名前しか教える気は無い。」
「ケチだな。まあ、お前のそれは今更か。今はどうしてんの?梓君」
そう聞かれて手に持っていた煙草を堪らず折ってしまった。
「熱出して、寝てる。冴島が見てくれてる」
「冴島?元気してる?」
「多分な。俺も久しぶりに会ったし、ちゃんと話せてねえから知らねえ。」
「あいつ頭硬いからなぁ。俺の商売にまでケチつけてくる時あるしよぉ。」
それはお前の仕事ゲスいからだろ。などとは言えずに、新しい煙草を取り出して口に咥える。
「お前は?ケチつけられたことある?」
「無いな」
「俺だけかよ!えー!職業差別じゃね?情報屋だって立派だろうがよー」
立岡は俺と冴島と中学の頃からの同級生で、今は情報屋という危ない仕事をしている。
情報屋だけじゃなく、頼めば運び屋や今回の様に人を捕まえてきてもくれる。一応は眞宮組の組員でもあり、俺にとってはいい仕事のパートナーだ。
「でもやっぱり、まともな職につけたのは冴島だけだったよな。俺らの予想通りじゃね?」
「そうだな」
ケラケラ笑う立岡は機嫌がいい様で、その後もふんふんと鼻歌を歌っている。
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