17 / 292
第17話
立岡と話をしていると夏目がやって来た。
夏目は松岡真治が吐いた内容を事細かく伝えてくれる。
「食事を与えないことや性的暴力等、様々なやり方で傷つけていたみたいです。それで一度死にかけて、その時に防衛本能が働いてか、記憶が無いと」
「···成程。その後施設に入れて、テメェは逃げたってことか。」
「はい。」
「松岡は梓が誰の子供か分かっていたのか?」
そう聞くと一つ頷き、「知っていたと言ってました」と返事をした夏目。
今の会話を聞いて色々と察したのか、立岡は頷いて「可哀想だね」と言葉を零す。
「わかった。2人とも、このことは他言無用だ。···立岡、依頼されても言うなよ」
「わかってるよ。俺はお前に関しての情報を売ったことは無い」
「そうだな。···夏目助かった。お前はもう休んでいい。」
そう言うと、夏目は深く礼をして部屋を出ていく。
「面倒な物件だねえ。俺なら無視するかな」
「俺とお前は違う。考えている事も、梓との関係も、全部」
「そうだな。」
立岡は俺を見てニヤニヤと笑っている。
「俺はもう帰るぞ」
「えー!俺と飲もうよ」
「親父と飲んだんだろ。」
「志乃とはまだだって。いいだろー」
「無理。じゃあな」
部屋を出て、家に向かう。
梓は冴島に任せているからきっと大丈夫だとは思うけれど、不安は不安だ。
早く顔を見て安心したい。
その思いが足を早く動かせた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!