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第19話

*** ガタガタと揺らされる。 身体をあちこちにぶつけて、痛みで顔を歪める俺に浴びせられるのは罵声だけ。 「···い、たい」 お腹は空いているし、体も痒いからお風呂に入りたい。 なのにこの、閉じ込められている小さい箱からは出ることが出来なくて、痛みや空腹に堪えていた。 *** 「───···ずさ、梓、起きろ」 肩を揺すられて目を開けると、自分が酷く荒い呼吸をして汗をかいているのがわかった。 無意識に志乃さんの服を掴んで離さなかったようで、慌てて手を離すと、志乃さんが目を合わせてくる。 「魘されてた。夢でも見たのか」 「ぁ、あ···痛い、痛い···っ、ゴホッ、」 「大丈夫だ。落ち着け」 志乃さんが優しくそう言ってくれる。 優しく話をされたのは新鮮で、返事もできずにボーッと志乃さんを眺める。 俺が落ち着いたことを確認した志乃さんは俺の頭を撫でた。 「···とりあえず、服、着替えるぞ。すげえ汗かいてるから」 「ごめん、なさい」 「別に謝ることじゃない。それから冴島が置いていった解熱剤飲むぞ。」 志乃さんが俺から離れていく。 咄嗟に腕が伸びて志乃さんに触れようとしたところを、自制する。 この人は俺を監禁している人なのに、自ら触ろうとするなんておかしい。 「···志乃さん」 「あ?」 「志乃さんは、何で···俺を監禁してるん、ですか」 そう聞くと志乃さんは少しだけ、いつもの無表情を崩した。苦しそうに歪められた顔はすぐに元の無表情に戻ったけれど、その瞬間に志乃さんの本心が見えた気がする。 「さあな」 「···俺は、志乃さんにとって、いいもの、なんですか」 「ああ。俺にとってお前はメリットしかない。だから痛めつける気は無い。苦しい思いをさせるつもりもな。」 少し離れた場所から薬を持ってきて俺の口に薬を放り込み、水の入っているペットボトルを蓋を開けて俺に渡す。 「着替える前に、汗拭かねえとな」 「·········」 志乃さんは優しいのか、そうじゃないのか、わからない。 でも志乃さんが俺にとってメリットしか感じないように、俺にとっても志乃さんにはメリットしか感じない。 熱に侵された脳で考えると、普段なら行き着かない答えに辿り着いてしまった。

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